GW初日となる土曜朝は晴天に恵まれた。
野鳥が小気味よく鳴いて青空を横切り、清新な朝の光がきらきらと川面に跳ね、風が吹くたび川沿いに連なる新緑からもまぶしいほどの光がこぼれる。
そんな生気に満ちたなかを走るから、いつにも増してカラダが弾んだ。
走ることはなんて気持ちがいいのだろう。
その喜びの余韻にひたりつつ、続いては家内とともにジムへと向かった。
走る60分と泳ぐ30分では、時間感覚として同じくらいだろうか。
得られる心地よさは別種のものだが、その充足感は走ることと較べ勝るとも劣らない。
いまのわたしにとりこの二つが喜びの双璧を成すといってもいいだろう。
ジムを後にし、芦屋の土山人で昼にすることにした。
いつものとおり店内はこれぞお金持ちといった雰囲気の客で占められていた。
ジム帰りの粗末で質素なたたずまいでは多少なり気後れを感じるが、わたしの友人たちなら誰であれこの層を相手にしてもまったく引けを取らない。
そのように持って回ったやり方で自尊心を保ち、わたしはいつものとおりせいろと田舎蕎麦をそれぞれ大盛りで注文し、家内は家内でいつものとおり冷やしすだち蕎麦を頼んだ。
やはり土山人がいちばんおいしいと家内は言うが、わたしは門戸厄神の夢打ち庵に軍配をあげた。
前者が繊細で上品な蕎麦だとすれば後者は荒削りで無骨な蕎麦と分類できる。
だからうちの息子たちに意見を求めたとすれば、おそらく後者を推すことだろう。
そして、食後は先週同様ロイヤルホストへとクルマを走らせた。
集中して作業するならここをおいて他になく、途中から雨脚が強まって外で遊ぼうといった気も失せたから集中度がマックスレベルに保たれた。
先週は旅行の輪郭を整えた程度。
今回の詰めの作業で目鼻まで整った。
各地観光案内所に問い合わせて渋滞予想を聞き、道の状態を聞き、レンタカー屋に電話してタイヤはスタッドレスにしてもらい、わたしたちの予定に合わせホテルに夕飯の時間を連絡し、昼食は各地の人気店を選び予約の電話を入れて席を確保した。
また前回は行き先を漏れなくピックアップしたが、現実的にすべてまわるのは不可能だから今回はその行き先を絞りに絞った。
その取捨選択にあたっては、家内の意見をすべて尊重した。
女房と意見を戦わせたところで得られるものは何もなく、女房に勝ったところで幸せにはなれない。
ここは夫婦円満の鉄則を念頭に、負けるが勝ち。
行程表がほぼ仕上がったときには、交渉が首尾よくまとまったといった満足感が得られた。
時計をみると夕飯の予約の時間が迫っていた。
楽しい夕飯となることは、この時点ですでに決まったも同然だった。