KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ほんとここはいいところだよ、とても

朝、家内に連れられ9時過ぎには家を出た。

 

京都へと向かう新快速はたいへんな混みようだった。

大阪駅で大勢の人が降りる間隙を縫って、補助席になんとか座ることができた。

 

高槻駅でまた大勢の人が乗ってきた。

車内は人で充満し、わたしたちは座りつつも補助席で小さく縮こまって解放のときを待った。

 

京都駅で車内の人が一斉に掃き出され、ホームには人の渦ができた。

柱の死角にて息を潜め、渦が止むのを待って移動すると、ああ、地下鉄も人で溢れ返っていた。

 

電車が入ってきてもたちまちのうちぎゅうぎゅう詰めとなって、わたしたちは一本やり過ごすほかなかった。

 

そのようにして北大路駅へとなんとかたどり着き、そこは人もまばらだったからようやく人心地つくことができた。

 

加茂川に沿って北へと歩を進めた。

晴れ渡る空のもと、空気は凛と冷え、のびのびと歩いてとても気持ちがいい。

だから家内の二万語も冴え渡って、実に楽しい。

 

まもなく上賀茂神社の鳥居が見えてきた。

神域に引き込まれた清流と色づく木々が陽光を受けてきらきらと輝き、野鳥の鳴き声と水流のせせらぐ音が耳に心地よく、空気が高貴に香って心を清め、存在することの役得が全身に染み渡った。

 

もし非存在に語りかけるとすれば「やはりここはいいところだよ、とても」といった話になるだろう。

 

参拝を終えたとき、ちょうど真ん前をタクシーが通りかかった。

運転手が気さくなおじさんで、アマンあたりは風致地区で特例的に京都市が開発を許可した、ロクキョウトが建つ場所はもとはボウリング場だったといった話を教えてくれた。

 

京都人の閉鎖的な体質にも話が及び、新参だと地蔵盆には呼んでもらえないといった話があり、堀川通りの銀杏並木を横目に街の景色の移り変わりについていろいろと語って聞かせてくれた。

 

二条城あたりに差し掛かったとき、40年前、ここには路面電車が走っていたとの話になって、わたしはその情景を思い浮かべた。

残っていればその風情が人を呼び、観光の目玉として人気を博したに違いない。

 

食事はグリルフレンチで、京都に数ある洋食屋のなか図抜けておいしく、知る人ぞ知る名店だった。

 

白ワインからスタートし、揚げ物の際にはビールを挟み、また白ワインへと戻り、ハンバーグの登場時には赤ワインを頼んだ。

 

締めはカツサンドで、そのふわふわさ加減に顔がほころんだ。

「やはりここはいいところだよ、とても」

わたしは心からそう思った。

 

そこから街を歩いて和久傳で珈琲を飲んでみやげを買ってウィンドウ・ショッピングを楽しんだ。

歩数を見ると16,000歩に及んでいた。

ではこのへんで。

電車が混み合う前に帰ろうと駅を目指した。

 

河原町駅だと始発だから座ることができ梅田で降り、阪急だと10%割引になるから京都で見て気に入った品をそこで買いそれから帰途についた。

 

家に帰ると、ちょうどそのタイミングで宅急便屋が現れた。

 

お菓子の他、タコちゃんからごっついステーキが届いていつもどおり家内は大いに喜び、「ほんとここはいいところだよ、とても」とわたしは誰にともなく語りかけたいような気持ちになった。

2023年12月2日午前 北大路から賀茂川を北上し上賀茂神社

2023年12月2日昼 二条城前 グリルフレンチ

2023年12月2日午後 紫野和久傳 堺町店

2023年12月2日夜 かんたん夕飯 焼豚ときのこの炒めもの

2023年12月2日着 ありがとう タコちゃんからステーキ