疲れていようが酔っていようが家内が英会話のオンラインレッスンを欠かすことはない。
一度など東京の静かなカフェでおっ始めようとしたから慌てて制した。
一昨日はマダガスカルの人と話し、小さな島だと思ったところ日本よりはるかにでかいと分かって驚いて、昨日はガーナの人と話し、森林伐採の影響でライオンが街に出没して人を襲うと聞いて日本のクマ事情と同じでないかと話が噛み合い、ではライオンとクマはどっちが手強いのかといった実に興味深くも他愛のない議論を展開していた。
そんな充実を横目でみて思う。
ああ、なるほど。
家内にとって人生の前半は後半のための準備期間であったのだ。
娘時代を終え気づいたときにはサル同然のわんぱく坊主を必死に育て髪を振り乱し、夫を支え、事務所の助けになろうと国家資格を二つも取り、しばらくの間、自分のことなどお構いなしという時間が続いたと言えるだろう。
そしてあっという間。
いまや子育ての期間は過去の思い出となった。
もちろん夫の世話などおとといおいで。
晴れて自分に最優先にて関心を向け、自らの関心事に邁進することができるようになった。
前半戦を通じ、人間としてひと回りもふた回りも大きくなった。
そんな成長のレベルに呼応するように各所でいま家内は様々な出会いに恵まれ始めている。
出会う方々は家内とは別様に生きてきた女性たちである。
が、ある種、家内の写し鏡とも言える存在で、なんというのだろう、ある地点まで登り切った地点で、やあといった感じで顔を合わせたといったという風に見える。
家内を取り巻く景色は、かつて麓で見えていたときとは一変した。
さあ、いよいよ後半が始まった。
家内を取り巻くメンツが出揃い、動くフィールドは日本各地へと広がって時々は世界にも足を延ばすといったことになるだろう。
内へと向いた前半から一転、外へと大きく開いた実に濃厚で中身の分厚い家内独自の時間が積み重なっていく。