東の空に並んで輝く明けの明星と有明月を眺めながらクルマを走らせた。
法隆寺で高速を降り大和路を進んでいると、空は白みはじめたが霧が立ち込め、神域が近づきつつあるのだとの実感が伴った。
所要90分、ちょうど朝の7時に間に合ってわたしたちは生まれてはじめて長谷寺の勤行に参加した。
千年続く朝の読経が凛と冷えた空気を震わせるように響き渡る。
手を合わせ夫婦揃ってじっと耳を傾けた。
やがて外舞台の向こうから朝陽が差し込みはじめ、それがことのほか暖かいものに感じられた。
勤行が終わってわたしたちは更に奈良の奥地へとクルマを進めた。
向かうは龍穴神社だった。
神域の度が深まって、吉祥龍穴を前にわたしたちはおのずと厳粛な気持ちになった。
そこから目と鼻の先にある室生寺にも足を運び、二百段のぼって本堂、そこから五百段あがって奥の院でもわたしたちは手を合わせた。
昼食は一如庵を予約してあった。
樹木生い茂る山道をひたすら進まねばならず遠路を余儀なくされたが訪れた甲斐はあった。
店主の食への哲学が一貫しており供されるすべてにそれが反映されていた。
奈良の奥深さを食で体現している店と言えた。
食後もお参りを続け、今度は岡寺を訪れて厄除けの鐘を夫婦でついた。
帰途、大和高田にいい台湾スイーツの店があると家内がいうので寄り道し二種のトーファを夫婦で分けた。
たまには奈良に来るもんだ。
充実の一日を振り返りながら夫婦で思うことは同じだった。
湾岸線の向こう、海を照らす夕日を眺めて帰宅して、わたしは夕闇迫る武庫川を走り、家内は夕飯の支度を整えた。
日曜も残すところ僅か。
食卓に並んで座って柏原ワインを開けて飲み、ザ・マンザイをみて大笑いした。