寒波が到来し、回り回ってその影響がちっぽけなわたしの日常にも及んだ。
電車のダイヤが乱れ、訪問先が遠方だったからとても約束の時間には間に合わない。
謝罪の連絡を入れ、状況を伝えた。
わたしからの連絡を受け、いち早く気がついたのはお相手の方だった。
わたしたちは同じ電車に乗っていて、同じ駅で足止めを食っていたのだった。
長く停まったままの電車からホームへと出て、約束の時間より早くお目にかかることになった。
そこでずっと話していてもよかったが、ようやく動き始めた電車に乗って元の待ち合わせ場所であった事業所へと向かった。
打ち合わせを終え、その時点でかなりの時間が経過していたから双方とも次の予定の時間が迫っていた。
だから一緒に事業所を後にしたのであったが、のぼりの電車も遅れに遅れていた。
その到着を立ち話しながらホームで待ち、結局、お相手の降りる駅までずっと一緒だったから、あれこれ私事にわたって話し込み、寒波が取り持つ縁というのだろうか、わたしたちの仲は、この日を境に一層深まることになった。
当初の予定より大幅に遅れて事務所に戻り、遅れを挽回すべく業務に励んだ。
夕刻には業務の秩序が元へと戻って、寒さも幾分かやわらぎ、電車のダイヤも回復していた。
業務を終え、梅田へと向かった。
家内との待ち合わせ場所は、東梅田駅の改札をあがったところにあるタクシー乗り場だった。
タクシーに乗り込んで運転手に「しゃぶしゃぶやすだ」と行き先を告げたが、店の名だけでは分からないというので毛馬町だと場所を伝えた。
さあ、肉を食べようと夫婦で意気込んだ。
忙しい日が続くと随所に楽しみが必要で燃料が欠かせない。
つまり、おいしい肉へと行き着くのが当然の流れだった。
ビーフシチューに入る肉がふわふわで、出だしからわたしたちはとろけた。
牛肉のタタキもロースカツも絶品だった。
赤ワインが進んだ。
メインのしゃぶしゃぶを経てラストの合鴨のタタキまで、わたしたちは感嘆しどおしとなった。
だから来月の予約をとり、年末には息子たちを連れてこようと話が決まった。
店を出て通りでタクシーを拾って南森町で降りた。
上質な肉だとお腹がもたれない。
だからラーメンで締めようと、「大陸風」に入って夫婦そろって海鮮ラーメンを頼んだ。
日々を頑張るには楽しみが必須。
2月の旅行の話などを詰め、来月も楽しい予定に満ち溢れることになった。
それがあるから元気にこの日常をわたり歩くことができる。
美味しい肉を食べ、最後はあたたかな炭水化物で締めて、幸せそのもの。
夫婦でニコニコ電車に揺られて家路に就いた。