雨が降り止んだのを見計らって家を出た。
この日もJR神戸線が動いておらず、バスと阪神電車を使って梅田に出た。
地下鉄に乗り換え谷六で階上にあがるとき、すれ違う人がみな傘をたたんでいたので嫌な予感がした。
案じたとおり、階下から外を見上げると、雨が束となって降り注いでいた。
出口の狭いひさしの下で壁に背を寄せタクシーを探した。
刻々と時は過ぎ、待つこと5分。
空車と表示されたタクシーが視界に現れ、わたしは勢いよく左手を挙げた。
まさかそれがパンチとなって、脇を歩く男性の頬にヒットするなど思いもしなかった。
狙ってもパンチなどそうそうは当たらない。
それがジャストミートしたのだから、わたしもその男性も大いに驚いた。
一瞬、時が止まって視線が絡んだ。
ああ、面倒なことになる。
わたしは反射的に身構えた。
が、男性は何事もなかったように雨のなか走り去っていった。
ダイヤが乱れ誰もが急いでいた。
男性も同様であったのだろう。
まさに不幸中の幸いと言えた。
ほっと安堵し、わたしは当のタクシーに乗り込んだ。
事務所前につけてもらい助さん格さんをピックアップしようやく出発となった。
今月から契約となる大口の顧客先をその初日に訪れた。
打ち合わせは二時間にも及んだ。
想定以上にいろいろな業務が生まれ、実に幸先のいい令和3年の折返しとなった。
客先を出る頃にはすっかり雨があがっていた。
タクシーを拾い、続いてはグランフロントに向かった。
昼食のため白雲台を予約してあった。
奥の席に案内されて、そこに家内が座っていたから助さん格さんは驚いた。
この日のため家内にはあらかじめ声をかけてあったのだった。
肉奉行として家内は大いに張り切った。
息子らに食べさせるみたいにじゃんじゃか肉を焼いて飯をお代わりさせ肉を追加し最後には冷麺まで食べさせた。
皆で肉を食べる。
これは最良の食事の形だろう。
四人満腹で帰りもタクシーを使った。
谷六まで運ばれたのは鉄の結束だった。