重しが取り払われたと分かった途端、足元がふわふわとし始めた。
それで足取りも軽く、わたしは寄り道して帰ることにした。
行き先は正宗屋で、そこで生きた心地にひとりしんみりとひたることにしたのだった。
1月に入り、難度の高い任務を担い、それをこなしつつ新規の顧客もあってかなり気の張る日が続いた。
そこに災難が降りかかった。
逆恨みでもされたのか、無茶苦茶な因縁をつけられた。
どう考えてもこちらに非はないが、ジャッジする側からすれば難癖も放置はできない。
しかるべき対応を取らねばならず、結局わたしはその解決にかなり神経をすり減らすことになった。
職業柄、最悪のことも想定する。
そして最悪にフォーカスすれば往々にして恐怖感が生じる。
非はないとの確信はあっても、だから決着するまで生きた心地がしなかった。
もちろんそんな悩みは誰にも打ち明けず普通に過ごし、晴れてこの日、因縁に謂れのないことが明白となった。
これで一件落着。
思った以上に気持ちが苛まれていたのだろう。
軽く足に震えのようなものを感じた。
ほっとすると全身の力が抜けるというが、こういう場合、まずは足に来るのだと知った。
足元がふらつくから、だから是非とも一息入れる必要があった。
ビールを3本立て続けに飲んで落ち着いた。
さあ、2月。
いろいろいい話も浮上し始め、わたしにとってはようやくここからが新年のスタートとなる。
このようにいきなり意気揚々となるのであるから、やはり心配事はないに越したことはない。
家に帰ると、週末に頼んだ日生の牡蠣が届いていた。
ワインを開けて乾杯し、家内と台所で新鮮美味な牡蠣を蒸し焼きにして次々と頬張った。
「新年」の幕開けに相応しい宴となった。