一週間が慌ただしく過ぎ、気づけば金曜になっていた。
午前中に業務の山場が来て、あとはルーティンをこなして無事、終業の時間を迎えた。
仕事は山積しているが、オフがあるからオンが生まれる。
さあ、遊ぼう。
わたしは皆より先に事務所を後にした。
前日はコート不要だったが、打って変わって冷え込んで夕刻の街路には寒風が吹き荒んでいた。
コートの前をきっちりと閉め長堀通りを玉造へと向いて歩いた。
寒暖が目まぐるしく入れ替わり、このようにして春が到来する。
そう思うと、薄暮の夜道にあっても頬が緩んだ。
途中、地の神社があったので立ち寄った。
心を鎮め自らと向き合う。
ほんの僅かな時間で何かが正される。
そう思うから地の神社を素通りすることはない。
頭を下げて手を合わせ、家族の名を唱えてまた頭を下げた。
まもなく店というところで電話が鳴った。
家内からだった。
少し遅れる、タクシーがつかまらない、とのことだった。
この日家内はインディバの施術のあと恒例のヘッドマッサを受けていた。
常連だから少し長めに施術してくれ、かつタクシーがつかまらないから遅刻やむなし。
わたしは先に店へと入ってビールを頼み、四日ぶりとなるお酒をちびちびと味わった。
まもなく家内が現れ横に座った。
ずっと一緒に暮らしているのに今更ながら、そんな些細なひとコマにわたしは幸せを感じた。
毛蟹のジュレ添えを筆頭にあれこれおすすめの品を堪能したが、さすが品数豊富な名店だけあって一度の訪問で味わい尽くすなど土台無理な話だった。
だから再訪することにし予約を入れてから店を後にした。
長堀通りへと出ると肌寒さが増していた。
歩く気が起きず、以心伝心、わたしたちの目は通りを走るタクシーに注がれた。
家内があれこれ運転手に話しかけ、昨今のタクシー事情など聞いているうち家に到着した。
ああ、週末がやってきた。
そんな実感が込み上がった。