雨が降り続き、どこかに出かけようといった気も起きない。
しかもまだまだ肌寒い。
まったり、といった語はすでに死語だろうか。
この日は突如浮かんだそんな懐かしい言葉とともに過ごすことにした。
新聞をめくると高校生が自死したとの記事に目がとまった。
カンニングを咎められ「卑怯者」呼ばわりされた。
それを苦にしたとのことである。
振り返れば、十代の頃はテストばかりだった。
その結果を総合すれば「わたしは間違いだらけ」との結論が導き出せるだろう。
一生懸命がんばったところで、時に自信満々の手応えを感じることがあったところで、結果はいつも間違いだらけ。
バツ、バツ、バツ。
そのバツの殴打から逃れることなどできやしなかった。
そして、実のところいまもそう。
正確さが命といった仕事に携わっているが、間違うことから逃れられるものではない。
間違いがつきものなのだから、それを苦にしていたら、苦にすること自体も間違いで、カラダが持たない。
だから間違うことを織り込んで、おおらかに構えるのが間違いの悪循環から逃れる唯一の方法なのだろうと思う。
そうすれば自死するといった大間違いを回避することができるのではないだろうか。
そんなことを思いながらプールで泳ぎ終え、混み合うガーデンズに寄って女房と飲もうとワインを選んだ。
入れ替わりで家内がジムへと出かけ、夕刻までの時間がぽっかり空いた。
さあ何をして過ごそうか。
そう言えば、テイラー・スウィフトのコンサートフィルムがディズニープラスで配信されていて、家内がそれを観たいと言っていた。
韓国でぶっちりぎの人気を博したドラマも、同じくディズニープラスで配信されている。
それでディズニープラスに入会し、わたしは「ムービング」を見始めた。
いやあ、おもしろい。
序盤からわたしははまった。
誰もが登場人物の誰かに自分を重ね、感情移入できる。
そんな多様で多層な構造のなか、不穏な何かが同時進行し、観るものを惹きつける。
それにヒロインがめちゃかわいい。
なるほど、よくできている。
四話に入ったところで家内が帰宅し、気づけばあたりはすっかり暗くなり始めていた。
一緒に夕飯を食べワインを飲み、そして大きなテレビの前に並んで座った。
かつてそこには家族が集まった。
いまはがらんとした一角にひさびさ腰を下ろしたのだった。
出だしから、ちょっと感涙。
いやあ、テイラーはすごい。
細部まで演出が凝りに凝って、ダンサーたちの動きも素晴らしくて見応え充分。
これをライブでみた家内と二男がその後もずっとテイラーに魅了され続けているのも当然のことだろう。