上京する際、あれもこれもと家内は料理をこしらえる。
息子たちが喜ぶと思えば、労を全く厭わない。
それはそれでいいのだが、送ればいいのに持参するから荷物の嵩が増して重くなる。
もちろん運ぶのはわたしである。
だから、ちょいと愚痴のひとつでも口からこぼれ落ちそうになる。
が、愚痴ればせっかくの楽しい「遠足」に水を差すも同然となるから、ぐっとこらえて笑顔を作る。
幸いホテルは東京駅に隣接していた。
笑顔を貼り付けたまま持ちこたえ、なんとか無事ホテルへとたどり着いた。
早めにチェックインを済ませ荷物から解き放たれて、ホテル真下の地下街で家内と簡単に昼を済ませた。
そしてまずはわたし一人で本郷へと向かい、長男の部屋を訪れた。
ただ食料を置き、そのまま部屋を立ち去るのであるから配送の業者さんみたいなものである。
ホテルに戻ると家内は部屋で歌の予習に余念がなかった。
邪魔せぬよう、わたしはひとりフィットネスへと移動して、トレッドミルにて傾斜と対峙した。
広々とした空間のなか天井を見上げたりしながら、たっぷり走った。
走り終えたとき、家内はすでに東京ドームへと出かけていた。
現地集合で、そこで二男と会うことになっていた。
席はVIP2だが公演初日のツイッターを見るとVIP席とは名ばかりで、無秩序に晒されそれはもう酷いものだったようである。
それで即、わたしは事務局へとメッセージを入れた。
この度はお世話になります。
VIP2の席で入場予定なのですがツイッターの記載などみると初日のVIP席は秩序なく人が前に押し寄せ、盗難もあったと目にしました。
セキュリティについて万全を期していただけますようお願い致します。
不安を覚えたのでご連絡させていただきました。
さあ、どうなることだろう。
開演前、二男と合流したとのラインを最後に家内からの連絡は途絶えた。
楽しめているだろうか。
そう案じながら、わたしはテイラー・スウィフトのミックスリストが流れるYouTubeの画面に見入った。