夜は鮨こいき。
それがあるから頑張れた。
豊中を皮切りに業務を開始し伊丹を経て阿波座に移動しここでの業務が長時間に及んだ。
しかし、夜は鮨こいき。
だからへっちゃら、頑張れた。
事務所へと戻って保留にしてあった連絡業務に取り掛かり電話をかけまくって、ラストスパート。
一点凝視して目指すは鮨こいき。
この夜、タコちゃんが鮨こいきを貸し切りで押さえていた。
タコちゃんが率いるクリニックのスタッフに混ざって、わたしはカウンターの一角に紛れ込んだ。
なんてラッキーなのだろう。
で、思うのだった。
こんな店を借り切って、職員に珠玉の寿司を振る舞う。
あちこちに幸をもたらして、いやあ33期はみな大したものである。
そしてやはり鮨こいきはめちゃくちゃ美味しかった。
そもそもわたしが本格的な鮨を食べた最初がこの店だった。
もちろんタコちゃんに連れられてのことだった。
その原点回帰の夜となった。
あん肝、うなぎ、牡蠣、あわび、ほたるいかなど出だしの前菜から度肝を抜かれ、美味しさが波状で押し寄せ、その勢いで、かつてこれまでの喜びの記憶の封がぱっかり開いた。
体内に宿る全喜びが噴き出し一堂に会するようなものだったから、わたしは惚けたみたいに大はしゃぎして、またも親戚のおじさん化し無神経にも無用な話をいろいろ繰り広げてしまったのではないだろうか、面目ない。
それでもしっかり次回の予約を忘れることはなかった。
来月、西宮の鮨たけやを訪れる次の日に空きがあったので、そこに席を取ってもらった。
途轍もなく美味しい寿司を連チャンで女房と味わうことになるがたまにそういうことがあってもいいだろう。
帰途、さっきまでの美味が新たな美味を誘ったのかもしれなかった。
空腹であるわけがなかったのにわたしは地元のラーメン屋に吸い込まれていった。
季節限定で提供される麺屋しろぼしの担々麺は本格中華の店も押し黙るだろうと思えるほどの出来栄えだった。
鮨こいきでゴールを切った後の余韻にひたる、輝かしいウイニングランのような締めとなった。