家内はヨガへと出かけ、わたしは長い時間をジムで過ごした。
ここ数日まったく足を運べていなかったから、ひさびさ泳いでその心地よさにひたった。
土曜の午後、人影のほとんどないプールを悠々と行ったり来たりし、あっという間に60分が経過した。
続いてマシンエリアに移動して、弛緩を意識しほぐすような感覚で筋トレに取り組んだ。
サウナで仕上げて帰宅し寝入っていると家内に起こされた。
いつの間にかあたりはすっかり暗くなっていて、あわててわたしは支度を整えた。
大阪へ向かう車中で、家内と向かい合わせに座った。
横長のシートに座る面々を見渡して家内と何度か目が合って、思った。
ここがわたしの定点というのだろうか、居場所なのだった。
駅の桜橋口からタクシーにのって「富ゆき」までは5分ほどだった。
前回は「ふかれひコース」を選んだから、今回は「かにコース」を頼んであった。
店は新しいが、ウェスティンやレイユームンで培われた店主の技は伝統芸とも言える域にあった。
趣向の凝らされた珠玉の品を味わって、ワインのチョイスも心憎いばかりで、最初から最後までそこで過ごす時間が楽しくてならなかった。
三杯出された上海ガニはもちろん絶品で、一口ごとにわたしは目を閉じてその美味の世界に没入した。
そして、締めもまた驚嘆すべきラインナップになっていた。
かつてレイユームンで供されていた大衆的な中華がハイレベルで再現され、終盤の麻婆豆腐や炒飯や担々麺など、わたしにとってはドンピシャのどストライクであったから、コースすべてを通じ非の打ち所がないというしかなかった。
「今度、友人らを連れてきます」
そう店主に告げて店を後にした。
駅まで歩いて電車に乗った。
またも家内とわたしは向かい合わせに座る形になった。
と、家内の表情が華やいだ。
無事に期末試験が終わったと二男が家内にあててメッセージを送ってきたのだった。
そうそうわたしと家内の間には息子が二人いる。
この二人がいるから、わたしたちはいついつまでも強く元気に前向きに明るく生きることができるのだった。