たっぷりジムで運動してから、まだ夏日の火照りが残る夕刻、家内と共に桃谷へと向かった。
もともとは金曜夜に二人で訪れる予定にしていた。
予定を変更したのは、二男が急遽帰省すると知ったからだった。
大将に相談したところ、土曜夜なら三人分の席が取れるというので、それで無理を聞いてもらった。
わたしたちが先に着き、まもなく引き戸を開けて二男が店に入ってきた。
この日、早い時間から星光66期の面々と集まって昼から天満で飲んでいたのだという。
酒席が取り持ち中高時代より更に交流が深まって、「いつまでたっても大阪星光は仲がいい」という伝説は本当のことだったのだと、二男もまた当事者として実感し始めている。
学校への思いはどうあれ、友だちに恵まれて、だから大阪星光でほんとうによかったと日頃はクールな二男であってもウェットな気持ちを隠さない。
そういう意味で、33期のわたしも66期の息子も同窓生としての共感を同じくしていると言えるだろう。
鮨こいきを味わうのは彼にとって初めてのことだった。
当たり前だが、昼に口にした天満の鮨を圧倒的に凌駕して、二男をして「似て非なるもの」と言わしめた。
わたしたちは、鮨こいきのすべてに絶句するほど感動し、絶句が醸して深めるコミュニケーションの確からしさを実感し、言語以前の人類の交流はこうであったのかと太古の情景へと思いを馳せた。
今後二男が率先し、それなりの実入りとなった段階で33期がそうであるように、66期もまた鮨こいきをご贔屓にしていくことは間違いない。
場所も学校から近く、何人かで集まってじっくり話し込むのに格好の場所になっていくことだろう。
最後にとろたくを追加して、大将に礼を述べ店を後にした。
これからまた友だちに会うという二男とわかれ、わたしたちは家へと戻った。
ちょうどアド街ック天国がはじまるところで、このところ馴染み深くなった八重洲の街をテレビ画面に眺めながら、家内は夜食の準備に取り掛かった。
土曜の会食を終え、長男がおそらくこのあと家に帰ってくる。
そう思う家内がじっとしているわけがないのだった。