気持ちとは裏腹。
疲労が取れて、たいていの月曜は快調に仕事が進んで量もこなせる。
ところがこの月曜、出だしから低調だった。
前日、遮二無二掃除した。
普段使わぬ筋肉を酷使して、結果、頭がうすらぼんやりするほどの疲労が残ってしまったのだった。
こんなとき、若い頃なら職場からエスケープしていただろう。
調子が乗らないのをいいことに、仕事をさぼってどこかをほっつき歩いたに違いない。
しかし、もういい歳したおっさんで、職務で負う責任は小さくはない。
だから低調ながらもいつものとおり前へと進むことにした。
足取りはとぼとぼとしていても、その分は時間でカバー。
長く働けば済む話だった。
そして、えっちらほっちら。
なんとか無事、一日の業務をやり終えた。
帰途、電車のつり革につかまってぼんやり思った。
確かに勢いを欠き、攻めの仕事はできなかった。
が、しっかり守って崩れることなく、ちゃんと一日を戦い抜いた。
振り返れば、そういう日々を積み重ねてきたのだった。
勝たずとも、負けない。
極論すれば何も勝ちに行くことはなく、負けなければそれで十分なのかもしれない。
そう思えた。
まもなく女房から連絡が入った。
いまジムから戻って夕飯の支度をはじめたとのことだった。
カニだというからわたしは白ワインを買って帰ることにした。
勝たずとも勝利の美酒にありつける。
負けなければいいのだから、ずいぶんと楽で恵まれた話である。
この役得の喜びをかみしめつつ、夜は食事しながら女房の二万語に耳を傾けるだけ。
あと二十年は現役を続けられるような気がする。