日曜はトレドを巡るエクスカージョンを申し込んでいた。
バスの出発時間が早かったからホテルでの朝食をさっさと済ませて出かけるつもりだった。
ところが、用意されたビュッフェがあまりにも充実していたのでわたしたちは本格的にそのメニューと向き合うことになった。
太陽の国と言えばスペイン。
太陽の沈む場所もないほど世界に権勢を轟かせた時代を指しての言葉であるが、降り注ぐ陽の光が強く豊かで、だから食産物が美味しいといった意味でもそう言えるのではと思った。
チーズもハムも各種卵料理もパンもフルーツも野菜も何もかも頭抜けたおいしさだった。
それで長居し、集合場所である地元旅行社への到着が遅れてしまった。
係員に誘導されて王宮前の地下駐車場へと走り、なんとか無事バスに乗り込んだときには心から安堵した。
もし乗り損ねていればこの旅行自体が台無しになってしまいかねなかった。
マドリッドから南へ走って90分ほど。
トレドの街が視界に入ってまずはその外観に息を呑んだ。
樹々が美しく街を覆い、水流も豊かに流れる川がここが桃源郷であることを示し、だからこの地にかつて首都が形作られ、壮美で堅牢な建築物が数々群生していったのだと納得がいった。
そしてもちろん凄いのは外観だけではなかった。
大聖堂はじめ内部へと入ってまたわたしたちは目を奪われ続けた。
微に入り細に入り施された装飾は壮大で、ヒトというものはここまでの過剰を生み出す存在なのだと、震えのようなものを感じた。
ヒトが有する凄みをまざまざと見せつけられ感化されないはずがなく、今後仕事する際なんどでもこの目撃体験を思い起こすことになるだろうと思えた。
今回のエクスカージョンは奇蹟の地への訪問といった趣きを帯び、夫婦にとって特別な意味を持つ日となった。
ほんとうにバスに乗り遅れずに済んでよかった。
そのように、これまた今後なんどでも振り返ることになるだろう。