1
4月4日と言えば、公認会計士清水章夫の誕生日である。
この歳になれば誰もそれらしいようなお祝いの言葉は発しない。
ただ心のなかそれぞれに相手のことを思うだけのことである。
この土曜日午後、面談業務が詰まっていた。
平日に来所難しい方の都合に合わせれば、喜んで土曜日を献上することになる。
そもそも土曜が休日となったのは平成に入ってからのことであり、昭和に育った我々にとって土曜は少し浮き立つ程度、実際には何の変哲もない平日と同じようなものである。
2
業務を終え、梅田に向かう。
引き続き雨模様の大阪である。
春の陽気がほどよく冷え、雨滴の匂いにのって土曜夕刻のくつろいだ数々の思い出が一斉に押し寄せてくる。
混み合う梅田の地下道の押し合いへし合いをくぐり抜け階上にあがると、大阪きっての待ち合わせ場所サン広場が眼前に広がる。
さらに人がごった返している。
見渡せど見渡せど人だかり。
タローとはよくこの場所で待ち合わせした。
そんなことを思い出しつつ、まるでタローと再会したような気分のまま河童横丁へ向かう。
その昔、今や押しも押されもせぬ心臓外科医となったタローと食った古潭ラーメンの前を通りかかり、今夜の待ち合わせ場所である酔鯨亭を通り越したことに気づく。
思い出に耽りすぎていたようだ。
遠い過去から現在へと引き返す。
3
酔鯨亭は河童横丁のなか目立つ角地にある。
店内中程のテーブル席にセノー君の背中を見つけ、よっと声をかけ隣に腰掛けた。
会長はまだ来られていない。
今夜セノー君を介して、星光同窓会の会長にお目にかかることになっていたのだった。
待ち合わせ時間丁度に、会長がお見えになった。
早速、土佐料理を堪能する時間が始まった。
ちょうど朝の旅サラダで高知県が取り上げられていた。
テレビで仮想体験したばかりの美味珍味に舌鼓を打ち、星光伝説のカリスマを前にかしこまり注がれる地酒を飲み干していく。
私は途中リタイヤとなったけれど、星光生であったことに心から感謝したい素晴らしい時間を過ごすことができた。
卒業後それぞれに流れた時間と境遇が、星光というアングルを通じて共有化される。
たとえ学年異なり在学中には未知であったとしても、あの学び舎で過ごし南部や黒姫で寝起きしたのであれば、星光生については初対面ということにはならず、出会いはすべて懐かしい再会という捉え方がふさわしい。
4
終電間近、北新地から電車に乗る。
Chantal Kreviazuk の These days に聴き入って電車に揺られ感慨にふける。
仲間を思うとき、これほどしっくり来る名曲はない。
何だか気分がよくなったのだろうか、酒酔の酩酊のまま、家には向かわず私は西宮ラーメンに向かった。
替え玉を注文したときには、4月5日となっていた。
あれやこれやと楽しいことが目白押しとなるであろう平成27年新年度に思いを馳せ、私は酔客とは思えぬほど力強く、勢いよく麺をすすった。