寂しくなれば電話をすれば済む話。
夕飯のあと家内が二男に電話をかけた。
わたしたちはFaceTimeの画面に顔をくっつけ、部屋でくつろぐ息子と向き合った。
東京二日目。
明け方に目が覚め、彼はひと気のない早稲田通りをひとり歩いた。
朝になって同じ早稲田に進む66期と合流した。
同じ部活のチームメイトであり、二年前、国体の大阪代表に二人揃って選ばれた。
だから気心知れた仲。
大学の部活の練習場に一緒に出向いて挨拶し、その後、二人でご飯を食べて互いの部屋を行き来した。
夜になっても用事が続く。
8時からは次の待ち合わせ。
大阪星光65期の先輩が、同じ早稲田の法学部に在籍している。
野球部出身だから部活は異なるが、タメ口で話すくらいに仲がいい。
先輩の部屋はここから歩いて5分の場所。
履修科目について助言を受け、登録を手伝ってもらうことになっている。
そんな話を聞きつつわたしは何度も頷いた。
なるほど、教えなくても星光生。
何かの引き寄せ、星光生は星光生と過ごすことになる。
そしてここに新たな出会いが交差していく。
出会いの春が胎動し、いよいよ始まる。
旅立つ息子にわたしは言った。
すべての出会いを大切に。
現金な話。
出会った友だちが皆びっくりするくらいに偉くなる。
当時、まさかここまでとは思わなかった。
全業種全世界に直通で繋がると言えば嘘みたいな話であるが、本当のことである。
出会う誰もが重要な登場人物になり得て、その気になればここで芽生えた友情が生涯続く。
軽々にあしらえる者など一人もない。
振り返ってみれば、偶然を必然と知る不思議体験の連続。
どの場面も見逃せない。