花屋の店主に明るい色合いでとだけ答え、黙ってその手際いい作業に目をやる。
あっという間、ぱっと華やぐような花束が出来上がった。
まさに注文通り。
見ているだけで心にも花咲くようであって間違いなく明るくなる。
花束を助手席に乗せクルマ走らせ途中で弟と合流。
久々実家を訪れた。
たまには外食しようと店を予約してあった。
向かうは桃谷名店、焼肉ソウル。
さすがに母の日、店は混み合っていた。
親子対面する形でテーブル席に腰掛ける。
皆はビールでわたしは烏龍茶。
この日がピロリ除菌の最終日。
焼肉であろうが何であろうが天六いんちょの言いつけは絶対だ。
この7日間、最後まで抜かりなくわたしはアルコールを遠ざけた。
肉が続々と運ばれてくる。
まずは塩タン。
そして、赤身定番のラインナップ。
ロース、ハラミ、バラ、カルビ。
選手交代し、次に白身の軍勢が現れる。
ミノサンド、アカセン、テッチャン。
子らがいればその大半は彼らが平らげるのであるが、今日は大人だけの取り合わせ。
となると、中年なのにわたしと弟が子の役回りとなる。
いつまで経っても親は親。
焼けるが先にわたしと弟に肉をどんどこ寄越してくる。
我らも子に徹し、童心にかえったみたいになってうまいうまいとぱくついた。
結局その大半はわたしたちの胃袋に収まることになった。
何よりもまず子が肝心。
下町の一角でのささやかな暮らしのなか、わたしたちはまさにそのように育てられたのだった。
焼肉ソウルの肉は最上等であるが、冷麺も格別。
わたしが知るなか最も美味しい焼肉屋、しかもダントツと言っていい店である。
美味しさが感動となって、ちょっとしたような時間の記憶が鮮明に彩られる。
だからいい思い出を作るなら何より食事が肝心ということになる。
お腹もふくれて、満たされる。
日頃は口にできなくても、母の日だからこそ照れずに言える。
ありがとう、いろいろほんとうにありがとう。
心からそう思え、素直に感謝表明する食事の場となった。