グーグルマップによれば駅から歩いて10分。
ここ数日暑さも和らいでいる。
なんてことはない。
わたしはクルマではなく電車で向かった。
書類屋にとってクルマを運転しての移動は案外負担が大きい。
疲労管理を念頭に置いたとき、たいていの場合、電車を選ぶことが正解となる。
午前9時半過ぎ、駅に降り立った。
周囲見回し想像と異なる景観に置かれたことを察知した。
日陰を選んで歩くつもりがどこもかしこも建物の背丈低くて見晴らしよく、どこにいようがギンギラ太陽の直射を避けようがない。
おまけに途中からつづら折の上り坂となった。
傾斜に熱射。
それに加えて入り組んだ路地が迷い道となってグーグルマップも形無し。
地図が眼前の現実を全く反映していない。
都会から足踏み外して突如遠くの山奥に紛れ込んだようなものであった。
人の助けを借りる他なかった。
道伝いの要所要所で見かけたのべ二人に道を尋ねて、ようやく目的地にたどり着くことができた。
汗だくであった。
なぜこんなところにと思うほどパリッと垢抜けた業務行うクールな会社だったので、この汗のかきようは場違いに過ぎ、汗をふきふきしながらの序盤は苦しい時間となった。
が、空調に肌が馴染んで汗がひいてからは生き返った。
すっかり打ち解け、帰途は事業主さんに駅まで送ってもらった。
スキーで滑降するみたい、あっという間に駅に着いた。
月末なのでそこから母を訪ねて三千里。
寿司屋が休みだったので、近所の中華に二人で入った。
わたしはデラックス冷やし麺、母はさわやか冷やし麺を注文した。
妹の話になった。
中1から高3まで不動の学年1位であり兄弟のうち一番の優れ者と言える妹であるが、その子どもたちも揃って優秀。
中学生の子は選抜されていまスイスに留学中だと言うし、高校生の子はカンボジアでのワークキャンプに参加する。
小さかった甥っ子姪っ子がいっぱしの存在になりつつあることが心から嬉しい。
歳が近くて仲もいい。
彼ら従兄弟と息子らとの親密な行き来は将来に渡って長く続くだろう。
実り多い交流が生む様々な景色を思うとそれだけで胸満ちる。
昼間からビール飲む職人さんらを横目に、場末の中華で母と孫談義に花を咲かせる。
助け合い力合わせる孫らの交流を思い浮かべてのことだから、母にとってもさぞや美味しい冷やし麺となったに違いない。