前菜はタイ風春巻き。
細かく刻んだ野菜がたっぷり入って、作る手間が推し量れた。
鮮やかな赤をたたえる手製のナンプラーにしっかりとつけ頬張った。
一瞬甘みを感じるがじわじわと辛さが広がり、口から火が出た。
白ワインでは鎮火できず、炭酸水を階下の収納まで取りに走らなければならなかった。
で、癖になった。
この辛さが、やめられないとまらない。
メインのタイ風焼きそばパッタイにも、たっぷりナンプラーを振り掛けた。
風味よく歯ごたえあって美味しく、そしてまもなく辛さに襲われ、口から火が出た。
波間で無邪気に遊ぶ子どもみたいに、押し寄せる怒涛の辛さにわたしははしゃいだ。
そうこうしているうち二男が帰宅した。
午前中は学校で特別授業が行われ午後は部活、そして夜も勉強してから帰ってくる。
だから冬休みを満喫できるのも年末年始に限られる。
年末、義父宅に泊まるらしく義父に電話し料理などリクエストしている。
その姿が微笑ましい。
誰にも優しい義父なので、うちのバカ息子にも他と同様優しくしてくれる。
その懐は、子らにとり匿ってもらえるような避難場所。
子らは義父が大好きなのであった。
食後、家内にアロママッサを施してもらう。
仕事後、ジムで走ったが、50分ほどで足がとまった。
これは疲れに違いなく、こんなときは家内に助けを求めるに限る。
『ロンドン、人生はじめます』をデッキにセットし、映画を横目に施術を受けた。
渡り廊下を行き来する二男と何度も目が合う。
映画を観たいが勉強も進めたい。
息子の小さな葛藤が見て取れた。
ゴッドファーザーのときとは大違い。
主演のダイアン・キートンがとても可愛らしくて、好きになった。
幾つになろうと一緒に過ごしたいと思える人と過ごせることは素晴らしい。
シンプルに感動できて、後味のとてもいい映画であった。
映画が終わる頃、長男も戻ってきた。
家内がてきぱきと夜食を整える。
ブリしゃぶを美味い美味いとがっつく息子を夫婦で包囲するようにして話しかけ、彼の話に耳を傾け夜のひとときを過ごした。
平成30年も残すところあと数日。
週明けの月曜には大晦日となり、火曜になれば平成31年が幕を開けることになる。
この平穏が引き続きますように。
ただただそう願う年の瀬である。