休日のはざまの月曜日、仕事を早めに切り上げ実家に向かった。
途中酒屋で龍力という日本酒を買った。
駅を降りると急に雨が降り始めた。
コンビニでビニール傘を買いそれを差す。
不意の雨に見舞われ大勢の人がずぶ濡れだった。
ただでさえ冷え込みが厳しい。
眼前に広がるのはまさに踏んだり蹴ったりという様であった。
夕方のニュースを見ながら両親とテーブルを囲んだ。
母の手料理を食べ父に酒を注いだ。
父と話すと偏った思考が矯正される。
細部に囚われ感情の影響も受け、歪に針小棒大になりがちな思考がほぐされ、一段上から見直す視点が得られる。
そういう意味で師匠と言える。
わたしのような自営業者にとって貴重な存在である。
もちろん堅い話ばかりすることはない。
孫の話がいちばん盛り上がる。
だから話題はもっぱら長男と二男のことになる。
隔世遺伝と言えるのだろう。
長男と二男はそれぞれ彼らの祖父の別々の部分を引き継いだように思える。
長男は周囲をパッと盛り上げる。
色で言えば赤。
二男はクールな存在感で人を惹きつける。
色で言えば青。
色々受け継いだうち、主な色調は二人で異なる。
日本酒が空いたところで実家を後にした。
帰途、地元の駅前でひとり二次会の時間を経て家に帰ると家内がリビングにいたので一緒に過ごした。
家内がタブレットで映画『パラサイト』のニュースなどを見せてくれる。
一緒に観た映画なので愛着がある。
だからアカデミー賞受賞の報は嬉しいニュースだった。
そのとき時刻はちょうど9時。
慌ててテレビをつけKBSにチャンネルを合わせた。
案の定、映画『パラサイト』がトップニュースで扱われていた。
一言も理解できない画面をしばらく見つめ、コロナウイルスのニュースに変わったところでテレビを消した。
わたし自身が下町生まれの下町育ち。
『パラサイト』が描く半地下の暮らしとは無縁と言えず、たとえ能力あっても日の目見られず割りを喰う人々がいることにも心当たりがある。
高台にそぼ降る雨は半地下では汚水となる。
同じ事柄が異なる影響を及ぼし、映画ではその違いが「臭い」として描かれた。
誰かを見下すグロテスクな心象が生理的に自然なものとなる格差社会のいびつが映画を通じ俯瞰できる。
傑作である。
そんな話を家内としているとまもなく二男が帰ってきた。
二人の関心は二男に移りそこで映画の話は終了となった。