KORANIKATARU

子らに語る時々日記

明日は明日で、明日の風

仕事を終え一人居酒屋に寄ってから帰宅の途につく。

夜9時過ぎ。

駅のホームを吹き渡る風がふんわり暖かで気持ちいい。

 

風を感知するだけの一個の受容体となってしばし過ごす。

 

植物であればこれが合図に芽吹いたり開花したり、といったことになるのだろうが、わたしは人間なのでそんな芸当はできず、いとおかし、とだけ思ってただ風に吹かれ続けた。

 

阿呆のように風にあたってそれが味わい深いのも仕事を終えた後だからであり、もしこれから仕事というのであれば心地よくても阿呆にはなれず、ますます芽吹きや開花といった境地から遠くなる。

 

阿呆面のままそんなことを考えつつ電車に揺られ、今度は静かゆっくりと満ちてくるような充実感に心を無にしてひたった。

 

いろいろたいへんだったけれど、なんとか今日を乗り切った。

この感じが実にいい。

 

何か違法なものに頼らずとも、仕事を一生懸命するだけで気持ちがいい。

正しいことだけが楽しい、とカネちゃんは言ったが、それに近い感覚かもしれない。

 

乗り換えると神戸線は勤め帰りの人で混み合い、一様に皆、気難しい顔をしているように見えた。

 

あれこれあっていろいろたいへん。

表情がそう物語る。

 

もちろんわたしも同様。

「あれこれ」に包囲され雁字搦めになっているも同然。

 

だから束の間、弛緩できるときくらいは眉がハの字になるくらいの間抜け面になってもいいのではないだろうか。

 

電車を降り、右手の改札を抜ければ家に続くが、なぜなのだろう身体は自然と左へと吸い寄せられた。

とても気分が良かったからだろう。

わたしにしては珍しく、気の向くまま駅前でちょいと二軒目に寄ることになった。

 

明日は明日で、明日の風。

明日が来る前に思い悩んでも仕方なく、せめて夜くらいは肩の力を抜いて風の吹くまま成り行き任せ。

そんな感じでいる方が何かが芽吹いて開花する、そう漠然と思いつつ眉のハの字が更に緩んでおてもやんとなるひとときを過ごした。

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2019年3月27日昼 道頓堀はり重