いきなり舞台に立たされてもプロならそこで一芸を披露する。
突然息子の友だちが泊まりに来ても家内にとって朝ご飯を用意するなど朝飯前のことだった。
なにしろ歴戦の料理人。
子に美味しいものを食べさせたい。
それが家内のなか揺らぐことのないプライオリティであるから雨が降ろうが風が吹こうが来る日も来る日も子らの食事を作り続けてきた。
友だちらが来ても同じこと。
先日和食いいくらの板さんに教えてもらったとおり、米をザルで水切りしてから雲井窯で炊いた。
この方がほどよく水分が抜けて米が立つ。
添えられる味噌汁は出汁からすべて手作り。
おかずはあり合わせでなんとか形を整えた。
急遽こしらえた朝食としては十分な出来映えだったと言えるだろう。
残ったご飯はおにぎりにして彼らに持たせ、試合会場へと送り出した。
ときおり直射も降り注ぐが小雨も混じる日曜の午後。
近畿大会の二回戦が行われた。
相手は京都の大谷。
聞きしに勝る強豪だった。
立ち上がりこそ互角に凌いだ。
しかし力の差は明白だった。
昨日と違いまったく縦に進めない。
星光のパスの先には大谷の俊敏な男子がことごとく立ちはだかった。
つまり大谷の手の平の上で転がされていたようなものだった。
一矢報いる程度のことは可能でも、立ち往生させ青い顔させるにはほど遠かった。
昨日は自在に動き回った我がチームの飛車も角も完全に封じられ為す術がなかった。
一点、二男の球さばきは昨日と同様に目を引いた。
観衆のなかからうまっとの声も聞こえた。
プレスがきつくフィジカルで劣る場合には相手をかき回して引きつけてから前線にボールを送り込む、そんな戦術以外ありようがないと思えたがこれもまたあと一歩届かずであったから結局活路見出せぬまま引き離されていくことになった。
学ぶこと多い試合であったと思う。
捲土重来を期してもらいたい。
試合を見届け、家内と芦屋に向かった。
運転しながら家内と話す。
部活引退まであと一年。
これからは試合がある度、応援に出かけよう。
竹園で焼肉用の肉を買う。
おまけのガチャガチャで佃煮が当たって家内が言った。
弁当のおかずにちょうどいい。
駐車券をもらうが二時間無料だという。
そう知って芦屋に長居することになった。
マビッシュでケーキを選び、芦屋大丸で特売の焼肉を見つけ、さっき肉を買ったばかりなのにこれはお買い得だと一週間分買い込み、場所をコープに移して野菜を買い足し、飲み物には甲州ワインのスパークリングを選んだ。
駐車場が二時間無料。
そのせいで出費が嵩んだようなものであったが、これでまた二男はしっかりご飯を食べさせられることになる。
つくづく思う。
飯を食ってこその男子。
食うからこそパワーがみなぎる。
息子らはやはり家内を選んで生まれてきたのだろう。