未明の時刻、午前5時。
ガソリンを満タンにし事務所に向かった。
引っ越しを前に私物を整理しなければならなかった。
家に持ち帰るものをクルマに搬入し、幾つかの荷物はクロネコヤマトに頼み、捨てるものは撤去屋に任せ、本はブックオフに引き取りを頼んだ。
これだけで一日仕事となった。
雨が降り続けるなか際限のないような作業をし続け、最後にはへばった。
が、体力がかつてより増しているからだろう。
カラダはまだ燃焼を求め、ジムで仕上げてようやく気が済んだ。
午後7時、雨があがった。
帰途の車中、充実感に満たされた。
夕飯の支度は整っていた。
ファミリーマートで買った「ピエール・ド・ロワール」というスパークリングがとても美味しく、「まとめ買いしておくべきでは」と家内が言った。
この夜は二男から写メが届いた。
被写体は焼肉だった。
いい精肉屋を見つけのだという。
暮らしの様式が子に受け継がれていると分かって、夫婦で笑った。
あそこの肉屋はかなりいい、こっちの肉屋も捨てがたい。
振り返れば夫婦でそんな会話ばかりしていた。
いい肉屋と巡り会えれば僥倖。
息子がそんな感性になるのも当然という話だった。
そしておそらく、こういったスタイルの継承は肉屋ひとつに留まらない。
子は親の背をみて育つ、特に母の背。
家内の日常を思えば、子らには確かなものが伝わったと察しがつく。
日々の積み重ねがこのように報われる。
胸の内、ねぎらいの気持ちが湧いて出た。