夕刻、家内からメールが届いた。
食材を買い込んで荷物が増えた。
送料がもったいないのでトランク2つに詰めて持ち帰る。
ついては、迎えが必要。
送料よりわたしの時給の方が高い。
だからクール宅急便を使って。
こんな小理屈で応じる男子もいるだろうがそうなると夫婦仲にたちまち暗雲が垂れ込める。
男子は正論を述べているつもりでしかし女性にとっては無数のアリんこが放たれ体中を這い回るみたいな不快を感じるだけなので、頭にふと浮かんでも小理屈は絶対に封じなければならない。
喜んで、とゾウのようなおおらかさで返信するのがこの場合の唯一解となるのは、求婚する際にした必ず幸せにするよとの約束のなか送り迎えが当然に含まれているからである。
午後7時。
新幹線の降車口で待ち構え、家内が現れたと同時、2つのうち重そうな方を手に取った。
在来線に乗り換えて一緒に帰る。
隣り合って座れば連帯感も生まれ、これでこそ夫婦ということになる。
家で荷を解き驚いた。
汲めども尽きせぬほどの食材。
この量が家族への愛情の深さを物語っていた。
一つ一つの買い物に家内の思い入れがあって講釈を聞かされるが、だからここも聞き流してはならず質問交え感嘆しつつ相槌を打たねばならない。
日本一だといううずらの串カツ、取れたてのイカがその場でプレスされたイカ焼きなど、説明を聞いたからこそうまさが百倍増しとなって充実の夕飯となった。
メロンにモモにスイカなど息子が食べるデザートも当分の間今回の調達分でこと足りるだろう。
このガッツ、胸に刻もう。
我ら男子もこれくらいの愛情で応えなければならない。

