東大や京大を受験するには英検準2級以上の資格が必要になる。
現在の高2生からそうなる。
準2級と言えば、中学受験を終え英語を学び始め約1年。
中1の終わりか中2のはじめにはたいていの生徒がパスできるレベルであるから、ずいぶんと緩い要件である。
と思っていたが、憤りはその後にやってきた。
準2級は準2級であっても、なんと高3になった際に受検し合格しなければならず、試験自体も現時点で日程不明のまま年2回までと限定がなされているのだった。
つまり、中1や中2で準2級に合格していたところで昔取った杵柄とはならず、わざわざ改めて申し込んで高3生になって受け直さなければならないのである。
東大や京大を受ける予定なら避けては通れず、年に2回しか受験資格獲得の機会はない。
だから、ここでわざわざ準1級を受けるなどリスクになるだけであるから意味がなく、そんなアホなという準2級をネットで予約しお金を払ってわざわざ2回も申し込むことになる。
小さな頃にクリアした跳び箱一段を、いっぱしの青年になって跳び直さなければならないのであるからその図を思い浮かべれば、滑稽を通り越し悲しみさえ込み上がってくる。
1回の受検で費用は7千円弱。
その出費もバカバカしいが、それにも増して腹立たしいのが、問答無用とも言える時間の強奪。
無為に費やされる貴重な時間を集積すれば気が遠くなって現高2生が気の毒であり胸が痛む。
一体何のための入試改革なのだろう。
当初掲げられた理念は霞んで消えて忘れられ、無為な時間と無駄なお金が召し上げられるという理不尽だけ残った。
受験生に益はなく、英検の背後に潜む者だけが肥え太るのであろうから、何か裏があると皆が訝しむのも当然だろう。
それにしてもこんな馬鹿な話は聞いたことがない。
どこか遠いところにある後進国の不思議な因習といったふうにしか思えない。
後世、令和筆頭の愚策として笑い話になるのでなければ世も末というものである。
そんな話をしつつ、家内と梅田の阪神百貨店で買物を進めた。
夕飯とする刺身を見繕い、お店の人が一押したサワラの炙りを買い、おにぎりに入れる紅鮭と息子のための肉と果物を買い、夫婦で今夜開けるワインを選んだ。
人生は不条理に満ちて山あり谷あり。
家でこんなネガティブな話はしないでおこう。
わたしがそう言い家内は頷いた。
眉ひとつ動かさず軽くひとまたぎ。
この程度の愚策にはそう応ずる。
親がまず教えるべきはそういうことなのだろう。