家の快適さは事務所と比較にならない。
遅ればせながら在宅ワークを始めてそう実感している。
早朝に起き出した瞬間から仕事が進む。
作業エリアはダイニングのテーブル全面で、昔懐かしの洋楽を流す。
やがて空が白みはじめて、天窓から降り注ぐ光量が増していく。
沿道の景観が徐々に変わってそれを楽しむランナーのごとく更にピッチあがって仕事が捗る。
時折、窓外に目を向ける。
春を運ぶ風に緑がそよいで陽の光が跳ね、種々の野鳥が代わる代わる飛び立って青空を横切っていく。
目薬を差すより目に優しい。
事務所には使い慣れたiMacがあり馴染んだデスクと座り心地のいい椅子があって、そこが定位置といった一体感を感じるが、それをも凌ぐ。
文字通りホーム。
家ほどしっくりと来る場所はない。
もちろん場所を問わず仕事の波風は辺り構わず押し寄せてくる。
が、家にいると大船にでも乗ったような気持ちになるからだろう。
その居住感を楽しんで疲弊せず、気がつけば仕事を始めてしまうことになり、休んで構わないこの土曜も未明からずっと仕事することになった。
おそらく明日の日曜も同じように仕事することになるだろう。
日曜にどこか出かけて楽しいのは女房がいるからであって、留守ならただただ仕事する。
放って置かれれば、自身の地が出る。
バカの一つ覚えで仕事だけする、何の応用も利かない木偶の坊であることが明るみになる訳であるが、そこがわたしにとっては安住の地。
家で安住の地に憩う。
これをこそ至福というのではないだろうか。