朝から息子は肉を平らげ、わたしの前にはサラダとスムージーが置かれた。
バナナ、豆乳、プログリーンで構成されるスムージーに今回から新しい仲間として金沢の麦飴が加わった。
これでお腹の持ちが格段に良くなる、と家内は言った。
流す音楽はアラジンのサントラ。
山側の窓から秋の新鮮な涼風が吹き込んでくる。
公園の木々がそよいで、そこに野鳥のさえずりも加わった。
こうであってこその朝だろう。
前日はまだ暗いうちから出発した。
冷気だけが地を這うように漂い、気の利いた音色などどこにもなかった。
無骨な光が不気味に降り注ぐ殺風景なスタンドでガソリンを入れ、事務所に入って淡々と書類を整え、早朝から客先を訪れ粛々と業務をこなし、朝一番という時間に事務所に戻った。
そのような朝に比べれば、天地の差。
コーヒーを飲みつつ、巨大都市東京は参勤交代によって成ったという記事を息子に渡し、家内とどうでもいいような事柄について会話し、のんびりと支度を整えてから、行ってきますと階下から言って、行ってらっしゃいとの階上の声を聞き届け家を出た。
すっかり明るくなってすでに街はいたるところ活気づいている。
昨夕、枚方での用事を終えて事務所に寄った家内と商店街で買物した。
クルマだったから事のついでとあちこち回った。
ビッグビーンズで一週間分の牛肉と豚肉を調達し野菜を買い、もちろん夕飯の肉に添える赤ワインも忘れない。
続いて馴染みの魚屋に寄って刺身を物色し、中トロとかんぱちとイカを選んだ。
立ち去ろうとするわたしたちの背に向け、魚屋の女将が言った。
よっ、ご両人。
わたしたちにとって「ご両人」と言えば長男と二男。
極々こぶりではあっても太陽がふたつあるようなものだから、その明度たるやなかなかのもの。
朝の光を存分に浴びつつ足取りも軽やか。
よっご両人を胸に職場に向かった。