合鍵を携え下北沢に向け家内は自転車を駆った。
到着は朝の9時。
長男はすでに出発していた。
食材を搬入し料理を作り置きする。
それがこの日の目的であったが、部屋を見て家内は笑う他なかった。
荷物を置いてすぐ家内は自転車でスーパーに向かった。
掃除に必要な道具一式をカゴ2つに詰め込んだ。
お代が12,000円というから、掃除に必要なすべての小物をかき集めたようなものである。
部屋を掃除し特に水回りは念入りに行い、続いて洗濯にかかった。
衣服だけでなく布団も洗う必要があった。
そこらに積んである衣服もそのままにしておけない。
スーパーを再度訪れハンガーを買い込んだ。
結局、家内はスーパーまで3往復することになり、当初の目的であった料理の作り置きを終えたとき、下北沢の空は夕焼け色に染まり始めていた。
この日の宿は渋谷。
渋谷マークシティのポートにレンタル自転車を返却し、ようやく憩うことができた。
夜9時。
帰宅した長男からお礼の電話があった。
布団がいい匂い。
玉ねぎスープも美味しい。
こっちに住めばいいのに。
長男はそう言った。
長男の話を聞きながら、家内はメモ用紙に目をやった。
ホテルの部屋で書き記した明日のための買物リストは数枚にわたっていた。
まな板、包丁、キッチンペーパー、片栗粉、オリーブオイル、さとう、みりん、バター、その他、野菜に果物、各種肉類。
次の日もまた下北沢。
引き続き家内は本気で家事に勤しむことになる。