KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ようやく何でも話せる間柄になった

焼肉でも食べに行こう。

父が電話でそう言ったので、吹田からの帰途、行き先を事務所から実家に変えた。


先日までの寒さが影を潜め、日が長くなり夕刻でも明るい。

この明度が春の到来を明瞭に告げていた。


途中、電話がまた鳴った。

このご時世だからやはり家で食べよう、とのことであった。


役割分担し、父が寿司、私が酒を選ぶことにした。


実家の冷蔵庫には発泡酒しかない。

たまに飲むのにそれはない。

日本酒と合わせ、わたしはビールもどっさり買い込んだ。


実家にて男二人。

パックの寿司を分け、酒を飲む。


まるで学生が下宿でするような飲み方である。

だから、男二人に似つかわしい。


この際、聞いておくべきことを一切合切聞いておく。

まだまだ先の話だが、もしそうなったら、といった話についても遠慮しない。


先延ばしにすれば、その機会が永遠に失われてしまいかねない。

そうと知るから、遠慮の差し挟まる余地はどこにもなかった。


小さい頃を含めずいぶんと長い期間にわたって寡黙な父との「間」が苦痛だった。

会話がないから、たまに家族で外食してもめいめいが黙って食事をかきこんで、皆の気持ちは同じ。

その場から早く解放されたいと願ったものであった。


この歳になって父子二人。

ようやく何でも話せるようになったと思う。

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2022年3月2日の記録 親父と簡素な家飲み