大阪南部にクルマで向かった。
片道で二時間かかるから、移動だけで半日が過ぎる。
昔は頻繁にこんな「遠足」の機会があってそれを楽しんだ。
いまは予定をやりくりし、何とか合間を縫ってという話になる。
電車でなら多少なり仕事ができるが、クルマの場合、ほぼすべての時間をぼんやり過ごすことになる。
だから長男から電話があって、無為が有為となって救われた。
彼がもたらす多様な話題が車内を彩って、あっという間に一時間が過ぎた。
話して楽しく、話し終えた後も楽しい余韻が引き続いたから、ほぼすべてが有為な時間に置き換わったたようなものであった。
帰宅し、いつものとおり家内と食卓を囲んだ。
息子の成長ぶりについて家内に説明する際、わたしは映画『マトリックス』を喩えで使った。
主人公ネオが覚醒し、その動きが見違える。
それと同じ。
そう言ったところで家内が立ち上がり、映画のシーンさながらネオの動きを真似た。
そしてその動きがだんだん速くなり、随所にコミカルな仕草も混ざるから、やがてネオから乖離して、何か特殊なダンスのようなものとなった。
長男が話し、家内が踊る。
うちの暮らしに無為のつけ込む余地はない。