夜になって季節標準の気温に落ち着いた。
日中はまるで夏だった。
開けた窓から雨音とともに涼が入り込み、カラダに微か残る火照りが和らいでいった。
家内と夕飯を食べていると、テレビのニュースが東京地方の寒の戻りを伝え、わたしたちは東西の気温の差に驚いた。
そしてただそれだけのことで家内のスイッチはオンになった。
家内は動き始めたら止まらない。
赤ワインを飲み干して立ち上がり、わたしも駆り出された。
ノンアルで済ませたわたしがハンドルを握り、雨のなかクルマを走らせ向かうはスーパーで、息子らのため各種肉類を調達し、家に戻ってすぐ家内は仕込みを始めた。
わたしは指示されるまま家内の作業を手伝い、そして、家内が泊まるホテルの部屋を予約した。
明けて朝。
ゴミを出すため外に出た。
雨はあがり、ひんやりとした風が無人の往来に吹き込んで空気がとても清涼に感じられた。
家内も早朝から起き出していた。
肉を焼き、身支度を整え荷造りも済ませ、そして、花冷えのする街へと飛び出していった。
まだ朝という時刻に東京に着くだろう。
息子らには告げず、いつものとおり長男の部屋を訪れ、そして二男の部屋を訪れる。
母たる者の凄みを目の当たりにし、わたしはただただひれ伏した。