思った以上に忙しい。
自身の現状について、寝床でそう気づいた。
横になって本を読み、この時間ばかりは読書が成り立つ。
文字がすんなりカラダに入って、一体なぜそうなるのだろうと考えてみた。
日中は本を手に取っても流し読みか飛ばし読みとなってしまう。
何かに追われ、常に臨戦態勢にある。
だから、悠長に本の頁に留まる時間感覚と噛み合わない。
一日の用事を終え寝床に入ってはじめて、時間の流れが緩やかさを取り戻す。
心が落ち着き、読書と足並みが揃う。
海水で暮らす魚はそこをしょっぱいなど思うことはないだろう。
それと同じ。
わたしはしょっぱい世界で生きていて、どうやらそれにすっかり慣れ切ってしまったようである。
以前なら昼日中でも本を読み、そこに入っていけた。
いつしか時間感覚が変容してしまった。
心は一つところに落ち着かず、だから丹念に文字を追うのがじれったい。
つまり、わたしは非常に忙しいのだった。
そして、それで失われたものがあることに気がつかなかった。
寝床で本を読む。
時間に全身を預け、ただ揺蕩う。
この安らぎを大事にしなければ、そう思った。