KORANIKATARU

子らに語る時々日記

夜にだけ昔の時間が生き永らえていた

思った以上に忙しい。

自身の現状について、寝床でそう気づいた。

 

横になって本を読み、この時間ばかりは読書が成り立つ。

文字がすんなりカラダに入って、一体なぜそうなるのだろうと考えてみた。

 

日中は本を手に取っても流し読みか飛ばし読みとなってしまう。

 

何かに追われ、常に臨戦態勢にある。

だから、悠長に本の頁に留まる時間感覚と噛み合わない。

 

一日の用事を終え寝床に入ってはじめて、時間の流れが緩やかさを取り戻す。

心が落ち着き、読書と足並みが揃う。

 

海水で暮らす魚はそこをしょっぱいなど思うことはないだろう。

それと同じ。

わたしはしょっぱい世界で生きていて、どうやらそれにすっかり慣れ切ってしまったようである。

 

以前なら昼日中でも本を読み、そこに入っていけた。

いつしか時間感覚が変容してしまった。

心は一つところに落ち着かず、だから丹念に文字を追うのがじれったい。

 

つまり、わたしは非常に忙しいのだった。

そして、それで失われたものがあることに気がつかなかった。

 

寝床で本を読む。

時間に全身を預け、ただ揺蕩う。

この安らぎを大事にしなければ、そう思った。

2022年8月4日昼 西宮