晴れとの予報だったから、いい景色を眺めて昼を食べようと朝8時、クルマで出かけた。
しかし、始動が遅かった。
車列の流れが途中でつっかえた。
大津の手前は更にひどい渋滞になっているようだった。
だから京都南で高速を降りた。
ここまで来れば下道でも大差ない。
わたしたちは当初の予定どおりびわ湖バレイを目指した。
ロープウェイを乗り継ぐと山上に出て、そこにびわ湖テラスがある。
秋の晴天のもと山頂で過ごす時間は文字通り最上だろう。
そう思ってひた走るが湖西道路に至って深刻な渋滞に見舞われた。
しかも空には雲が出始め霧が立ち込め、とても景観を楽しむという雲行きではなくなった。
これではせっかくの休日が無為。
そう見切って、遅々として進まない車列から離脱した。
近くに琵琶湖大橋があった。
橋を渡って行楽の場を湖の向こう岸へとサイドチェンジし、流れを変えることにした。
橋のたもとに道の駅があるのを家内が見つけ一休みしようとなった。
曇り空を映す湖面を眺め、女房と焼肉弁当を食べ、せっかくだからと近江牛など食材を買い荷詰めしてから、琵琶湖大橋を渡った。
向こう岸は空いていた。
野洲あたりなど見渡す限り田園で、その広さに心が癒やされた。
今度上京する際は今より冷え込む。
晩秋に備え服を買おうとアウトレットに向かった。
ボトムはすぐに選べたが目当てであったコートにぴんとくるものがなかなかなかった。
巨大な敷地のなかを歩きまわり、結局、マーガレット・ハウエルにていい感じのカジュアルコートを見つけることができた。
わたしも家内も気に入って、示し合わせた訳ではなかったが、左前と右前だけデザインの異なるコートを選んでいい歳をしてペアルックとなった。
普段、一緒に行動するときには被らないよう注意が必要になる。
が、今度東京で息子らと待ち合わせる際、揃って着てみるのも面白いだろう。
おやじとおかんが同じコートを着ている。
その光景が息子らに与えるインパクトはかなりのものに違いない。
そんなことを思い浮かべて談笑をしつつ、いざ会計に臨んでわたしは顔面蒼白となった。
えっ、ショルダーバックがない。
崩れ落ちそうになりつつも持ち堪え、ストップモーションで記憶を辿った。
すぐに記憶は「その場面」に行き当たった。
さっきコートを試着したアバクロで、わたしはショルダーバックを陳列棚に置き、脱いだり着たりを繰り返し、そのまま店を出てしまったのだった。
一目散でわたしはアバクロへと駆けて行った。
血相を変えたわたしを見て店員がニコリと笑った。
かばん、ですね。
わたしは心底安堵した。
無事コートを手に入れることができ、その他、食器など良き雑貨との出合いもあって、やれやれ、結局は素晴らしい休日となった。
人もまばらなアウトレットだったが午後になって晴れ間がのぞき客足が増え始めた。
長居すれば帰りも渋滞に巻き込まれかねない。
さっさと帰ってジムにでも行こう。
そう意見が一致し、クルマに乗り込んだ。
高速の竜王入口が目と鼻の先にあった。
一気に加速し離陸するかのようにわたしたちは家路に就いた。