朝、家内の運転で家を出た。
いつもはすいすいと進む阪神高速がこの日ばかりは混んでいた。
海老江あたりで渋滞の度が増し、夫婦で横に並んで車列の長さに目をやった。
クルマがひしめき合う様子に気が塞ぎ、揃って閉口せざるを得なかった。
渋滞嫌いの家内であるから、いつもの賑やかさはすっかり影を潜めた。
それでこの日はなんとも珍しく、わたしが会話をリードした。
先日のこと。
ある事業主さんと雑談していて学費の話になった。
娘二人と息子一人を大学にやり、時期が重なったから学費の負担は一時期たいへんだった。
事業主さんはそう言った。
が、子どもたちが卒業した途端、見る間にお金まわりがよくなった。
不思議なもので、出費した分を補って余るほどお金が増えた。
なるほど、「リングにかけろ」のパワーリストみたいなものですね。
わたしはそう合いの手を入れた。
負荷に耐え、持ち堪えている間に「お金筋力」が増強された。
だから解き放たれた瞬間、ぶんぶん腕が回って、お金だけでなく運気まで呼び寄せることになった。
そういうことなのではないでしょうか。
我ながらうまい喩えだと思いつつわたしは言った。
実際、事業主の娘さんは二人が二人とも、人も羨むような良縁に恵まれ請われて嫁ぎ、息子さんはしっかり勤め人としての修業期間を終えて起業し、いずれは上場を目指そうというくらいの順調さで業績が推移している。
まさに家族全体の運気がまるごと上昇気流に乗っているといって過言でなく、すべてがつながり連関しているから、事業主が支出した学費はどう考えても「生きた金」であったと結論づけていいだろう。
そんな話を家内にして、まもなくうちもパワーリストが外れる状態になるだろう、めでたしめでたしと締め括ったところで、海老江の合流地点にようやく差し掛かり、右手側に阿波座出口へと続く進入路が見えてきた。
あとは、東大阪方面へと続く車列を横目に出口へとまっしぐら進むだけとなる。
渋滞から解き放たれて今度は家内が盛んに話し始めることになるだろう。