東京駅に着いてすぐパレスホテルへと向かった。
花冷えの日となって肌寒い。
気温を見ると9℃。
何か羽織ってくるべきだった。
ドレスコードがあるとのことでレストランの入口でジャケットを借りた。
着る必要はなく、手に持てばいいと言う。
素直に従った。
和服で着飾った一団の隣、窓際の席へと案内された。
見回せば客はみな綺麗な人ばかりで、下々の民を自認するわたしは気後れを感じざるを得なかった。
行き届き過ぎた給仕のサービスに気を遣いつつ、味わうより先、正しく食べようとの気持ちに捉われて、前を通り過ぎていく料理が美味しいのかどうか、正直なところよく分からなかった。
それでもお腹は膨れ、腹ごなしに歩こうとそこからまずは将門塚を訪れ手を合わせた。
たまたま通りかかり、そんな光景を不思議そうに見る外国人女子がいたのでやはり家内は近づいて、ここにはめちゃくちゃ強かった武将が祀られていて、そのパワーにあやかろうとみな手を合わせて祈ってるんです、といった説明を加え、じゃあねと言って手を振った。
地下鉄で九段下に出た。
一帯に咲き誇る桜が人を誘い出し、その列に並んで靖国神社から千鳥ヶ淵界隈を歩いて回った。
ひとしきり歩いて、ギャラリー册にて桜と花見客の行列を眺めながらコーヒーを飲んだ。
静かな空間のなか、今度訪れるスペインの移動経路を確認し合い、近々、漢江クルーズに参加するのでソウルまでの飛行機と宿を予約した。
夕刻5時、暗くなる前に帰ろうと大手町へと引き返しホテルにチェックインした。
家内はネットフリックスを見て部屋でくつろぎ、わたしはフィットネスにて脈拍マックスとなる強度で傾斜を走った。
ちょうど走り終えたとき、6月からと12月からの新規顧問について正式なオファーがあったとの連絡を受け弾んだ息が更に弾んだ。
夕飯はタコスがいいと家内が言うので東京駅の入場券を買って地下へと降りた。
北出タコスは全座席がちょっといい感じの若い女性客で占められ、それが店のレベルを如実に物語っていると思えた。
手掴みでチキンを頬張り鷲掴みでタコスにかぶりつき、大いに食べて飲んでお代は昼の三分の一に過ぎず、ホテルのフレンチより駅構内のメキシカン、わたしは自身の身の程を明確に弁えることになった。