能力不足が原因だという。
前任者が立て続けに更迭されて、わたしに声がかかった。
こうした場合、得てして業務のハードルが高い。
だからわたしとしては前のめりになるようなことはなく、紹介者の顔を立てる程度の気持ちで対応することにした。
まず先、電話での面談が行われた。
そこで、業務の一翼を担う専門家がわたしの知る人物であると分かった。
彼はお眼鏡に適ったのだった。
となると、逃げる訳にはいかず負ける訳にもいかない。
「ああ、あの人物なら大丈夫」
互いそう一目置き合う関係はぜひとも保持されなければならないだろう。
二度の電話面談を終え、この日、直接の顔合わせとなった。
話は一瞬。
こちらの希望額ですぐさま契約が決まった。
電話の時点で、わたしは「買い」と判断されていたのだった。
つまりわたしも「お眼鏡に適った」わけである。
しかし油断大敵。
業務のハードルが高いことに変わりはない。
それをいい方に捉えれば、業務のクオリティを常に意識することになるから自ずとわたしのレベルも引き上げられる。
このように「お眼鏡に適った」者どうし、機会を得て更に飛躍していくことになる。
そんな軌跡を思い描けば仕事が楽しい。