KORANIKATARU

子らに語る時々日記

お金持ちと言えるには最低でもこれくらいの収入は必要なのだろう

明け方、なか卯で朝食を食べながら考える。
この後でコンビニに寄りコーヒーやらを買い、昼は王将の餃子おすすめランチで節約し、仕事後に風呂入って夜は質素に養老乃瀧で一杯するにしても、ごくあっさり私一人で計5千円かかることになる。
土日も祝日もほぼ同様の生活リズムで過ごすとすれば月15万円。

たまに家で食事するにしても、外食する機会もままあってそんなときは養老乃瀧ではないので、差し引き出費はまだまだプラスされる。
見積もって月20万円。

「ちょいと一杯」する程度の生活だけで一人最低20万円かかることになる。

何一つ贅沢などしていない。
すべての要素は質素極まりない。
本も服もマッサージ代も何も含めずこれである。
私一人、普通に呼吸し軽く食事し過ごすだけで要するコストが月20万円なのだ。

私と同様の働き盛り、子供二人も育ち盛りという一般的な4人家族について想像を巡らせてみる。

一人の生存に要する基本月額は10万円。
大阪府庁建築振興課において建設業技術者の常勤・非常勤の見極めラインは月額10万円。
これを下回って人間一人が暮らせるわけがない。
常勤の技術者と認められないことになる。

月額10万円ではかつかつだ。
人間誰しも、多少は不要不急の入用にも充てる額を必要とする。

子らも女房も「ちょいと一杯」程度の健康で文化的な生活を過ごすとして、その余録コストを一人月額10万円と見積もれば、最低限の生存コスト10万円と足しあわせて、一人月額20万円は必要ということになる。

なんという符号。
これは私の必要額と同額だ。

余録コスト一人10万円というのも、子らについては私学や受験塾に要する月額総額を念頭にすればあながち的外れではないだろうし、一般的な女房については足りないくらいの話であろう。

四人家族でざっと80万円。
ここに家族が暮らす住居やクルマの諸費用を、家族一人分と概算して加えれば、4人家族一世帯で、月100万円かかるということになる。

「ちょっと一杯」程度の人間味を堪能するだけで、それだけの額になる。

もちろんこれだけではとても危うい。呑気なその日暮らしにも程があるというものだろう。

もしかしたらいずれ働けなくかもしれないし、老後は誰でにも訪れる、そのように考えれば、子らが健全に巣立つことを前提にしたとしても、将来いざとなったとき現状の生活を再現するためにも少なくとも半分の50万円は蓄えておかねばならないだろう。

しめて、一月150万円、年間で1800万となる。
これはもちろん年収ではなく、使える手取り額が年1800万円ということである。
たった4人の家族でこれである。

数字が光輝き、ほー、と溜息が出るような額ではないか。
しかし、これでも養老乃瀧でちょいと一杯レベル。
あまりに慎ましすぎて、とても金持ちとはいえない域である。
せいぜいこれで、将来の金持ち候補の入口についたレベル、と言えるだろう。

年収1000万円。
世間的にはこれで大台、まるで金持ちの仲間になったかのように褒めそやされるが、上記の分析で照らせば、大局的には何でもない額、虚飾に手出しすることはおろか、養老乃瀧のビールでさえ高級酒、「ちょいと一杯」も躊躇われる、むしろやりくりたいへんな額でしかない。
子の窮地を救う切り札となるかもしれない資産形成など夢のまた夢という次元である。

世間に金持ちは極小だ。
大半の人は、ぎりぎりの生活を余儀なくされている。

職業柄、あちこちに潜む金持ちを多く知るけれど、彼らは圧倒的な力量の差で子々孫々に渡ってその域にとどまり続け、世間に対してはあまり目立たぬよう、あるいは誰かを傷つけぬよう配慮しているのか、静か質素に佇んでいる。

彼我の差はますます広がるばかりとなる。

今宵、養老乃瀧。私などには贅沢過ぎた。
サッポロビールに一礼し、分不相応を噛み締めるように一雫まで味わって最後の晩餐とする。