仕事が長引いたのでジムはパスして風呂にだけ寄ることにした。
ジャグジーで20分。
これが疲労回復の目安である。
最後の力を振り絞り、這うような思いでクルマを走らせる。
和らかの湯にクルマを停め、着信に折り返しこれで晴れて業務完了。
あとはカラダを弛緩させるだけ。
ジャグジーで寝そべって20分過ぎるのを待つ。
20分も湯につかったのに、この夜、和らかの湯の寒いことといったらなかった。
見れば窓が全開になっている。
寒風吹きすさぶなか、洗い場でカラダを流すなどなにかの刑罰のようにも思えてくる。
風呂嫌いの子どもみたいにぴしゃぴしゃと用を済ませさっさと退散する他なかった。
クルマの中で暖を取る。
手にはペリエ。
遅くなったときは帰って寝るだけ。
家内の2万語を楽しむいとまもない。
となれば、お酒を飲んでも仕方がない。
一息ついてクルマを発進させ山手幹線伝って家へと向かう。
途中で信号待ち。
横断歩道を親子連れが渡っていく。
父と息子の取り合わせ。
その少年はまだ低学年だろう、父親の半分ほどの背丈だ。
ホモ・サピエンスの父子が前を行く様子を凝視する。
子は父がいて安心。
父は子がいて可愛くて仕方ない。
そんな結びつきが人型となって、左から右へと移動していった。
わたし自身もその結びつきのなかにある。
息子が二人もいる。
なんて幸せなのだろう。
尼崎の某所、そんな満ち足りたような思いが胸にあふれて、こぼれそうになる寸前、信号が青に変わった。