和らかの湯に寄って帰宅し炭酸水だけ飲み早めに横になった。
夜10時を過ぎ門の開く音がした。
家内が2階リビングから階下に声をかける。
釜玉うどんか明太子パスタかチャーシュー麺。
どれがいい。
1階玄関を入ったばかりの長男が即座答える。
かまたま。
しばらくして風呂を終えた長男が階段を上がる音が聞こえた。
夜食の用意はすでに整っていて、食卓で母と息子の会話がはじまった。
話題は食べ物のこと。
おにぎりのサイズや具のリクエスト、弁当の内容について。
そこに二男も混ざる。
試験が終わればまた彼の友人らが遊びにくるらしい。
やはり食べ物が話題の中心。
もてなすメニューについて討議が重ねられている。
わたしは3階寝室でそんな話に耳を澄ませる。
天国にいるのはこんな感じかもしれないと想像してみる。
天上においてもおそらく地上と同じ。
何気ない日常の会話ほど心休まるものはない。
うどんを食べ終え、次にデザートに進んだようだ。
アイスが美味しいとの息子の声がして、聞き耳を立てた。
わたしが帰りに買ってきたハーゲンダッツのアイスがお気に召したに違いない。
そう喜びかけてベッドのなかでずっこけた。
彼らが愛でているのはハーゲンダッツとは異なる銘柄のアイスであった。
階下の団欒に親父の出る幕は一分もなかったということになる。
そして夜が明け、また食べ物について会話行き交う我が家であった。
朝6時、兄弟二人は焼き肉とフルーツを平らげて家を飛び出していった。