北新地に来たときにはレオニダスに寄って家内のためにチョコを買う。
続いて寄るのは鮨処音羽。
ここで息子の土産に音羽巻を買い求めた。
お決まりの用事を終えてようやく今夜の目的地、寿しおおはたに足を向けた。
ちょうどビルの入口で渡邉弁護士と出くわしたので一緒に二階に上がった。
午後6時過ぎ。
カウンターにずらり男7人が勢揃いした。
天六いんちょの顔でなんとか確保できた貴重な7席であった。
待ちに待った寿しおおはたでの宴がいよいよ始まる。
ビールで乾杯し、期待で胸が高鳴った。
どんな極上品が振る舞われるのだろう。
さりげない風に会話しつつ、わたしたちは大将の包丁さばきを注視した。
一品目が差し出されると同時、あちこちから唸り声があがった。
声が漏れ出てしまうのを抑えがたい。
美味しさに魅了され、年甲斐もなく、男のくせに、わたしたちは一口ごとにまるで恋するかのよう、息を弾ませることになった。
だから交わされる会話も自ずと活性化されて料理と同様印象深く心に刻まれた。
カネちゃんが言うにはまっちゃんの子が灘に通ったというからめでたいことこの上ない。
やはり33期は賢く、その子も揃って皆かしこい。
忘れてならないのがその奥さんが非常にできた人で素晴らしいこと。
これぞまさしく良妻賢母。
伴侶にするならそのような方を是非、という鏡みたいな存在といって過言でない。
そう言えば氏野先生の奥さんもできた人。
部活での献身など頭が下がって他の母皆が敬意の念を抱いている。
そして間違いなく64期のMVPと言えば氏野くんになるだろう。
物理オリンピックに化学グランプリ、それに加えてフィールドホッケーでのインターハイ出場があって、とどめは京大医学部推薦合格。
部活仲間からの人望厚く、後輩からも慕われる。
そんな人にわたしも一度はなってみたいと思うほど。
そう氏野先生にわたしは語った。
ホッケー部と言えば、今年も東大合格者が生まれてここ数年絶えることがない。
東大文Ⅱに合格した彼は学年トップをひた走っていたというから、最強学力は実際本当に文Ⅰから文Ⅱへと針路を転換しているのかもしれない。
そんな会話を黙って耳にし、隣に座る京大法学部出身の弁護士は数度深々頷いた。
しめて20品ほど。
そのすべてに酔いしれて、最強寿司屋はここ、とわたしたちは全会一致で決議した。
だから当然、来月も。
素晴らしい仲間に囲まれて、絶品の寿司を心ゆくまで味わって、更けゆく夜の幸福をわたしはしみじみと味わった。
皆も同様であったに違いなく、だから安本先生がすすめるめはり屋文在ヱ門の天むすを、別れ惜しむように我も我もと右へ倣えで買い求め、各自家路についたのだった。
マンガに出てくる酔っぱらいのように折詰さげて千鳥足、思わず顔もほころぶ、上機嫌このうえない帰途となった。