マスクが市中に出回りはじめたようである。
仲間からの目撃談が相次いだ。
中国の輸入品を扱う店ならどこであれ普通にどっさりマスクが売られているとのことである。
これでようやくマスクにアンテナを張る日々から解放される。
駐車場までの道すがら必要分の調達を情報提供者に頼んでほっと安堵し家内の運転で帰途についた。
すでに夕刻。
たまには手抜きでいいのでは、そう話す。
息子の朝食のために買った焼鳥が余っていたからそれで十分。
焼鳥とサラダと豚肉のたっぷり入った熱々のスンドゥブチゲ。
これがわたしの夕飯となった。
地元鳥よしの焼鳥は絶品。
かなりうまいが、家内の作ったスンドゥブチゲには敵わない。
一方で息子の夕飯はと言えば、家内の実家から送られてきた焼肉。
前夜大量に焼かれ、まだかなりの量が残っていた。
焼肉なら何日続こうが子らは大歓迎。
うまい、うまいと二男が肉にがっついて、そんな様子を見るだけで愛おしい。
二男は優しい。
わたしにも焼肉を勧めてくれた。
が、わたしは固辞した。
その気持ちだけで十分だった。
もし食べ切れず肉が残れば長男に送ればいいのである。
前日同様、リビングの特設デスクで二男が勉強を始めたのでわたしは自室に引き上げ読書に勤しみいつしか寝入った。
夜中、テレビの音声が耳に届いて目が覚めた。
誰かがつけっぱなしにしているに違いない。
そう思って階下に降りて、音の発信源が二男のiPadであると分かった。
時刻は深夜2時半。
彼はYouTubeで作り方を見ながら特製のカップヌードルチャーハンを自作しているのだった。
勉強場所を少し変えただけで、耐久時間が長くなる。
若いというのは素晴らしい。
二男が勧めてくれれば味見くらいはしても良かったが、一瞬待つも誘いはなかった。
いつの日かわたしもカップヌードルチャーハン。
そう心の中で思いつつ、早く寝るよう息子に伝え潔くわたしは夢の中へと舞い戻った。