朝食は抑え気味にした。
新大阪駅で買った一本のさば寿司を夫婦で分けるに留め、昼に備えた。
東京駅に着いて待ちに待った昼食。
皇居外苑前の道をパレスホテルへと進んでグランドキッチンの席に座った。
家内はスタンダードにパスタのランチセットを頼んだが、わたしは半ば遊び心でハンバーガーを選んだ。
これが正解。
ホテルのバーガーはめちゃくちゃおいしいのだった。
お腹が満ちて、そこから表参道に向かった。
家内の後をついて歩き、家内がどこかの店に入る度まるで用心棒みたいにその前に立って道行く人を目で追った。
無目的にただ歩くだけだからそのうちわたしは疲労を覚えた。
ますます元気になっていく家内とはそもそも好奇心の量が異なっている。
わたしの場合、ものぐさが好奇心を上回る。
家内がいなければわたしの活動量は生涯にわたってゼロ行進を続けたに違いない。
わたしの限界を察知して、そこで散策は終了となった。
ホテルに着いてすぐ二男も姿を現した。
数日ぶりの再会を果たし、部屋に入ってまずは皆で窓外を眺めた。
窓の向こう、夕陽が神宮の杜を鮮やかに染めている。
富士山の勇姿を背景に、神宮球場の照明が煌々と灯っていた。
優勝争いも大詰め。
ヤクルトとの3連戦が目と鼻の先で始まろうとしていた。
ヨガのレッスンを受けて腹ぺこだと二男が言うので、早速夕飯にすることにした。
オーバカナルは宿から歩いてすぐの場所にあった。
日中は汗ばむ陽気であったが、夕刻には様変わりした。
地に淀む熱を追い払うかのよう、爽やかな風が間断なく吹き渡っていた。
ステーキ、鴨の丸焼き、鯛の丸焼き、エスカルゴ、ハム各種。
二男がどんどん頼んで、まもなくテーブルは満杯になった。
これで夜のはじまり、はじまりと相成った。
先日の後日談など耳にした。
理三首席は中学受験の際、灘も受験しそこでも首席であったこと。
もうひとりの理三は父親も理三で家族皆が医者であること。
そんな話をしながら息子が言った。
うちは親が早稲田。
なるほど、とんびが鷹を生むわけがない。
みなで腹を抱えて大いに笑った。
こちらでも星光生は仲がいい。
東大、一橋、早稲田でつるんで、飲んで食べて互いの部屋に泊まってといった交流のエピソードが実に楽しい。
食後、家内と並んで二男が歩き、その背をみて思った。
体格としてちょうどいい。
ゴツゴツとまでは行かず重厚で、細マッチョというよりは逞しい。
ガーデンタワーのコンビニで飲み物を買い、部屋のソファに腰掛けて仲睦まじく二次会の時を過ごし、順々に風呂に入って疲労を癒やし、湯上がりに目にする夜景がこれまた格別であった。
そしてこの場においてはわたしがおまけ。
つながりの濃さで父子は母子に及ばない。
ツインの部屋に増設されたベッドは、もちろんわたしにあてがわれた。