夢をみた。
場所は高校。
朝、遅刻し、わたしは体育教師にこっぴどく叱られた。
そんなわたしをなぐさめ、アキオが学食で昼飯をおごってくれた。
一緒にきつねうどんを頼み、アキオがPayPayで支払ったからそこで目が覚めた。
当時、アキオは大阪星光33期のなかもっとも男前で、そのときのアキオのままだったから細部までリアルな夢であったことは間違いない。
しかし所詮は夢。
当時PayPayなど存在しないから時代考証はいい加減なものなのだった。
夢を振り返りつつ、よりいっそう冷え込む夜、冬眠するクマのように布団のなかに潜り込み再び眠った。
引き続き、また夢をみた。
今度は33期とは無関係、近親者周辺が舞台となった。
ここしばらく行き来のない人物が眼前に現れた。
顔を合わすやいなや口を揃えて激しく痛罵され、しかし話は断片を適当につなぎ合わせたもので支離滅裂、時系列も都合よく前後入り乱れ滅茶苦茶だったから、聞いていて頭がおかしくなりそうになった。
言葉を浴びせられつつ考えた。
話の内容など荒唐無稽であるから考慮するに値しない。
そもそもの原因はコミュニケーションに空白が生じたことにある。
それを放置したから、一滴のインクの色が容器全体に広がるように、事実無根がリアルな相貌を帯びてしまったのだった。
なるほど、そういう意味で内容はさておき痛罵される原因はこちらにあった。
何か小さな行き違いがあったのだろう。
普通にコミュニュケーションを取っていれば自ずと解消するものをそこに目を向けず行き違うままにしてしまった。
だからその空白に何が生い茂ろうと、こちらがとやかく言える筋合いではないのだった。
そして更に大事なことに気がついた。
空白が空白のまま終わるのが人の世の常だが、そこにそれだけ熱い思いが生じたのであるから、この痛罵は深い情愛の裏返し以外の何物でもないのだった。
日常にかかずり合っていると、感性が鈍り思考が狭く凝り固まっていく。
だからそんな根本的なことさえ見過ごしてしまうのだった。
目が覚めて、夢で得た気づきを反芻した。
わだかまりはきれいに解けて消え去って、深い情愛に呼応するような気持ちが胸に芽生えはじめていた。
夢は現実以上に示唆に富む。
最初の夢に立ち返るなら、今度会ったとき、アキオはPayPayで何かおごってくれるということなのだろう。