行列ができるというから朝の7時半には家を出た。
朝食は家内が作ってくれたベーグルサンドで、家内が助手席から差し出してくれるのをハンドルを握りながら頬張った。
9時半に到着し、開店が11時だからいくらなんでも早すぎると思ったが、すでに3〜4組が並んでいたから驚いた。
家内を車内に待たせ、わたしが並んだ。
みんな暇なのか。
こんなに早くから並ぶなどおかしな話である。
もしかして10時開店なのか。
そう期待を寄せるが、10時になっても店内は暗いままうんともすんとも言わなかった。
まもなく先頭で待つ人の連れがやってきた。
続々と現れ、その数7〜8人。
ああ、これでは一巡目で席にありつくこと叶わない。
とほほ、と嘆くが、こういうときこそ時間を有効活用しようと気を取り直し仕事でもすることにした。
立ったままメールなどするうちあっという間に時間が過ぎ、11時の開店と同時、店内には入れたが中でまた長く待つことになったので、わたしは仕事を継続した。
待機席に腰掛け、じゅうじゅうと香ばしい匂いを放つ鉄板をときおり遠くに眺め、小一時間ほど経ってようやく鉄板を眼前に着席することができた。
時計はまもなく正午を指し示すところだった。
ほんもののカキオコを食べよう。
家内がそう発案し、遠路をおしてやってきたのであったが、わたしは家内に感謝した。
なんてことなのだ。
うますぎる。
牡蠣は牡蠣でもそこらで食す牡蠣とは肉感、濃厚さがまるで異なる。
そして、その美味がお好み焼きや焼きそばに絶妙にマッチするから、牡蠣を食べるならカキオコでというのがやはり正しいのだと感じた。
以前、ここを訪れたのは4年前のことだった。
愛想よく、優しい語り口調の大将が当時78と言っていたから、いま82歳。
80をまたぐとやはり変化は隠せない。
口数は以前より少なくなって、動きも少しゆっくりになった。
あれから4年。
ここで過ぎて行った歳月を思って、カキオコに別途しみじみとした味わいが加わった。
次回はもう少し間隔を狭め、再訪しよう。
家内もわたしも同意見だった。