水平線の向こうに太陽が姿を現し、和室の部屋に日の光が満ち満ちた。
温泉地であるから一日の出だしは当然に風呂で決まりだろう。
夫婦揃って階下に降り男湯と女湯、二手にわかれた。
露天風呂につかって、さっき部屋を照らした太陽を屋外で眺めた。
同じ日の光が瀬戸内の海をキラキラと照らし、その延長上にある風呂も照らし、ついでにわたしも照らした。
空は広く、海も広い。
そんな造作のでかい風景に自分という存在が取り込まれ、覚えるのはなんとも言いようのない心やすらかな一体感だった。
日頃身を置く世界とスケールが異なるから、縮こまった思考としなびた時間感覚が、ほぐされ潤いを取り戻すかのように感じられる。
おまけに温泉の湯でカラダまでほぐれるのであるから、赤穂温泉が「よみがえりの湯」だとゆわれる所以がよく分かる。
これだけでもここへ来た甲斐があったというものであった。
風呂を終えホテルのビュッフェで簡単に朝食を済ませ、クルマを走らせ日生の五味の市へと向かった。
せっかくここまで来たのだから収穫なしでは済まされない。
牡蠣とせとかを大人買いしてトランクに積み、帰り支度が整った。
これで心置きなくこの地を後にすることができる。
ではぼちぼち行こうと赤穂へと引き返し、この日予約していた赤穂の名店「さくらぐみ」を目指した。
伊和都比売神社(いわつひめじんじゃ)にクルマを停めてまず先にお詣りし、そして目と鼻の先にある「さくらぐみ」のテラス席に腰掛けた。
前回訪れた際は市街地にあったが、いまは海を望む場所にある。
海を眺めて、朝と同様に引き続き、広い景色に癒やされて、おいしいピザを二人で分けた。
食後、海岸沿いの遊歩道を歩いていると、海を背景に自撮りする二人組の女子がいた。
ここは家内が黙っていない。
駆け寄って声をかけ、二人を並ばせいろいろ写真をとってあげた。
昼を過ぎ、太陽は真上から地上を照らし気温がぐんぐん上がっていった。
暑さを感じたところで家内が言った。
そろそろ夏服がいる。
それで帰りの道中にある三田プレミアムアウトレットに立ち寄ることになった。
次の目的地が決まれば、家内の動きはすこぶる早い。
午後になって人出の増した赤穂御崎を後にして、高速を飛ばしアウトレットに向かったが、日曜の午後、ここも人で溢れ返っていた。
長居は無用。
ブルックスブラザーズにてポロシャツやTシャツを長男用と二男用に分けて選び、アディダスではどちらかが着るだろうとトレーニング用のTシャツを適当に買い求めた。
このようにして春序盤の土日連休の時間が過ぎて、帰宅し家内の牡蠣料理にて締め括られた。