早朝から起き出し家内は肉を焼いた。
その肉の他、平壌冷麺の焼肉丼、牛すじカレー、フロインドリーブの各種パイ、中村藤吉の抹茶ゼリーなど結構な量の荷をわたしが携えた。
夫婦での上京はいったいこれで何度目のことになるだろう。
台北、ソウルと続いた十月のいわば夫婦の三都物語は東京にて締め括られることになった。
もし行き先をたったひとつしか選べないのなら、東京の一択になる。
かねてより家内とそう話し合ってきた。
都市として他の追随を許さない。
それに加え、どこか遠くからわたしたちの元にやってきた子熊ちゃんたちがいま東京で暮らしている。
つまり選択肢としても東京が別格なのだった。
東京駅に着いて恒例のシュウマイ弁当を買い足して、ホテルに荷物を預けて、さあ出発。
まずは歩いて将門塚を訪れて手を合わせ頭を下げた。
そこから荒川土手行きのバスに乗って東大正門前で降り、歩いて数分。
長男の部屋へと入って食料を置き配した。
持ち込んだ食料をきちんと器に移し替えラップし冷蔵庫に並べるのであるから置き配と言ってもかなり行き届いている。
こうして、この日は19,000歩にも及ぶ愚直夫婦の東京旅行が幕を開けた。