上京しての初日、かなり歩いて草臥れた。
ホテルにチェックインして歩数をみると軽く二万歩を超えていた。
疲労があると寝付けない。
昔はそんな日ばかりだったことを思い出し、いまの暮らしがどれほど安閑としたものなのか思い知った。
それでももちろんいつしか寝入って、いつもどおり朝の4時過ぎには目が覚めた。
白み始める空を眼前に業務して、日の出を拝んだあと63階の部屋から49階のフィットネスへと移動した。
40分間休みなく泳いで筋トレしサウナに入って、マッサージチェアがあったからそこでしばらく寝そべった。
普段のメニューをこなせば、たちどころだった。
カラダに重く覆いかぶさっていた歩きっぱなしの疲労はいつしかきれいさっぱり消え去っていた。
部屋に戻ってアメリカ戦の模様を眺めつつ仕事の続きにかかり、日本の勝利を見届け家内とともに街へ出た。
自転車を借りぽかぽか陽気の横浜を疾駆し、中華街で昼を食べ、ハマトラストリートで買い物し、港の見える丘公園を経て山下公園も駆け抜けて、ざっと横浜の観光名所を一通りなぞった。
部屋でしばし休憩した後、今度は夜の部。
桜木町から電車を使って横浜駅に出て、4年前、慶應の入学式のとき家族4人でここに泊まった、ああ懐かしいと横浜ベイシェラトンホテルを夫婦で見上げて通り過ぎ、予約していたイタリア料理の店goffoを訪れた。
ワインがおいしく料理も素晴らしかったが、大阪とは何かが違うと気になった。
夫婦でその何かについてしばし思案し、まもなくその答えに行き着いた。
来ている客が皆きれい。
答えが明瞭に見えてしまうと今度は夫婦でそこにばかり目が行って、違いはますます歴然としたものになっていった。
いい店がある。
そう息子たちに教えてあげよう。
至る結論はいつものとおり。
夫婦揃って一致した。
ほどよく酔って、夜桜を眺めつつ駅まで歩いた。
空気の匂いは四年前の節目の時とまったく同じ。
わたしたちはまた一つ区切りの時間を共有することになるのだった。
四年前と同様。
明日は雨だと天気予報が告げていた。