週明けの業務がスムーズに運ぶよう、金曜は朝から晩まで事務所にこもって書類業務に明け暮れた。
根を詰めて机に向かうが、ときおり家内から写メが送られてきてそれで外の空気が入り込み、ほっと息がつけた。
この日家内は長男の中高時代のママ友らを伴って、秋の深まる奈良を訪れていた。
息子が高校を卒業して何年も経つがママ友らの仲は褪せることなく引き続き、間をおかず連れ立って顔を合わせている。
同じ労苦を乗り越えたといった共感が底流に横たわっているから、それで互いが引き寄せられるのだろう。
中学受験を契機に付き合う面々がガラリと変わった。
そうつくづく感じる。
ずっと以前の交友関係も途絶えず残っているにせよ、日常に登場する面々の最前列の構成が変わったのは確かなことと言えた。
良し悪しは別にして、それくらい中学受験はインパクトのあることなのだった。
もちろん息子たちにとってそれはより顕著な話である。
中学受験を経なければ彼らが有するいまの交友関係は得難かったに違いない。
そして当然わたしにしても同じことであり、もし中学受験していなかったら、33期の誰とも出会うことなく、彼らは別世界の人物であり続け気軽に話しかけるなどあり得ないことだっただろう。
そのようなことを考えながら、金曜までに仕上げようと思っていた分量以上に業務がはかどり、仕事が進むと気分がよく、自分たち家族がとても恵まれていると思うから更に気分はよくなって尻上がりに気分上々、だから遅くまで職務を続行している男子職員らを伴って一杯行こうとなるのも自然な流れだった。
天気予報によれば午後には雨があがるとのことであったが、依然として雨が降り続き、夜の街路が更に黒く染まって冷え込みの度もまた一層増していた。
そんなときは炭火を囲んでの焼肉だろう。
お酒がまわると注文にも勢いが出る。
赤肉が美味しくお皿丸ごとお代わりし、ひとしきりして頼んだ白肉も実に美味しかった。
食べログの口コミを見ると賛否両論といった感じであったが、メニューのなかでいい肉を選べば外れはない、と感じた。
食べて飲み今後の抱負を数々語って腹も膨れて胸も満ちた。
ではと店の前で別れ、わたしはタクシーを拾って家へと向かい、まず先に風呂を済ませてリビングにあがると家内が待ち構えていた。
ママ友らと会えば様々な情報がもたらされる。
情報は水流のごとく行き先を求め、わたしという受け手に向けて一気に押し寄せてきた。
ふむふむと家内の二万語に耳を傾けながら、この冬に備えて買い入れたハートマークのパジャマの上下が家内にとてもよく似合っているとわたしは思った。