朝から駆けずり回って、ようやく夕刻。
安息の時が訪れた。
焼肉きたうちは、河内永和を降りてすぐの場所にあった。
店の奥に特別なブースがあり、ここで北内社長自らが石垣牛を焼いてくれる。
この界隈だと神戸牛や近江牛といったところが聞こえ高い。
ちょっとエリアを広げても、宮崎牛、佐賀牛といったところが頭に浮かぶくらいで、石垣牛との言葉を耳にしたのは初めてのことだった。
社長によれば肉牛を育てるには石垣島が最適なのだそうである。
あちこちの大学の専門家も注目し、研究対象にするくらいなのだという。
いい牛を追求した結果、石垣島で牧場まで運営するに至り、そのように道を極めた人物を世間は放ってはおかない。
営業した訳でもないのに社長が取り扱う石垣牛についてどこかから聞きつけ、いまや超のつく数々の一流ホテルにも出荷されるようになった。
口に含むたび家内が感嘆の声をあげた。
つまりこれはもうほんとうに美味しい焼肉なのだった。
銀座の直営店は高級路線を突っ走り、一人客であっても完全個室で一元さんでは予約もできない。
そこで供されるのと違わぬ肉が、ここ下町、大阪の河内永和で味わえるのであるから冗談みたいな話であった。
たっぷり肉をいただいて、締めも意外。
ビーフカレーが登場し、肉は神戸牛を使っているというから、どこまでもすべてこだわり抜かれているのだった。
女房と感想を述べ合いつつ家路に就いた。
感嘆はどこまでも続いて、今度息子と食事するのに使おうとわたしたちは抱負を語り合った。